first love




俺が初めて南雲晴矢を知ったのは高一の夏で、初めて目にした瞬間本当に綺麗なモノだと思った。


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「名前くんて、よくわかんない」
だと思う。俺もよくわかんね。
ただ今付き合っている彼女さんの教室に来ています。ちなみに振られるフラグ立ってます。へし折る気力は俺にはない。彼女の名前はあゆみちゃん。名前のとおり可愛らしくなかなかのモテ子さんです。
告白は彼女からで、俺はとくに彼女のことを知っているわけじゃなかったけどまぁいっか。これから知ればいいしと思いOKした。軽いとか言わないでね。

「私といても全然楽しそうじゃないし、絵ばっか描いてるし。デートは美術館が多いし」
「そうかな?」
ま、たしかに絵ばっか描いてんな俺。あとデートで美術館に行く割合は多かった気がする。楽しそうじゃないわけではなくて、たんに眠かっただけだ。
「この先一緒にいるのはちょっと無理。ごめんなさい」
あー、まぁ別にわかりきってたことだしいいんだけどさ。つか、俺が謝るべきか。
「こっちこそごめん。俺みたいな奴好きになってくれてありがとな」
「うん、私こそありがとね」
俺は彼女と別れ、教室を出て通い慣れつつある美術準備室へと向かった。
さっぱりした別れ方で楽だったな。後腐れなくてよかった。前に付き合ってた子はヒステリー起こしてこれが流行りのヤンデレかと思ったぐらいだった。あゆみちゃんの最後の笑顔はキレイだったな。あの笑顔を最初に見てたら俺は彼女に惚れてたかもしれない。俺、綺麗なモノに弱いから。彼女のことは好きだったが惚れてはいなかった。俺ってやっぱ最低かも。

美術準備室のドアを開き鞄を置く。やっぱり此処は落ち着くな。窓に近づきふと、外に目をやるとグラウンドで部活動をやっている人達が目に入った。その動くモノたちを無心で見ていると一つ目に留まった。
瞬間、赤い、炎よりも赤い強烈な色に視界を支配された。
ドクリ、と心臓が跳ねあがった気がした。その姿は、その色は、俺の好きな綺麗な者だった。それからその人物を見かけると目で追ってしまうようになった。ついつい鑑賞してしまう。付き合っていた恋人と別れて間もないというのに俺はそのキレイなモノに夢中になっていた。暫くして、彼の名を知った。南雲晴矢というらしい。噛み締めるように俺は南雲晴矢という名前を反復した。その後も俺は南雲晴矢を鑑賞し続けた。描いた絵に無意識に赤をおくようになっていた。これは本格的に病気だな。俺はもしかして南雲晴矢に恋をしているのか?
たしかに、今までの俺の行動から考えるに自分が彼に向ける感情はまるで恋慕のようだった。
なんだ、そうだったのか。俺は霧が晴れるようにスッキリとした気分になった。普通なら自分は同性愛者なのかと悩むだろうけど俺はもともとジェンダーについてあまり興味がない。
俺は南雲に対する気持ちを受け入れた。
これは、"恋"だと。


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≪ピピピピッ…ピピッ≫

アラームの音で目を覚ましむくりと起き上がる。
あ、なんだ。さっきの夢か。周囲を見渡し、昨日自分がゲームをしながら眠ってしまったことを理解する。にしても、去年の夢見るとか…。やっぱちゅーしちゃったからかな。あの時は見てばっかだったしな。まさか同じクラスになるとか思ってなかったからわくわくしちゃったし。そしたらうん、ムラムラしてやらかしちゃったけど。仕方ないじゃん、同姓でも好きなんだから。正直一年よくもったよ俺。自分を誉めてやりたい。確実に襲ってたな、現に襲ったわけだし。
だって、肌白くてほんと綺麗だったもん。サッカーしてる奴って黒いイメージあったけど白い方だったし。やべ、興奮してきた。
とりあえず落ち着け俺!!
今日は学校だからどうやったって南雲と会うんだ。
同じクラスだし隣の席だし、殴られることも覚悟しておこう。
俺は気合いをいれた。

「打倒、南雲晴矢!!」

あ、勿論恋愛的な意味でね。



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