亭主関白な主と風丸
「まずい、35点」
「またかよ…」
ただいま俺は名前に飯を作り評価をいただいた。 付き合って長い俺達は同棲しているわけではなく、俺が彼女の家へ通っているだけだ。 飯を作ったり買い物をしたり洗濯したり。我ながら妻のようだと思う。 そして彼女は中々の亭主関白だ。初めて彼女の家へ行ったとき彼女はまず初めに俺に飯を要求してきた。何度か名前に異議申し立てをしてきたが結果、まあ…その日の夜にお仕置きを受けるという無限ループにより俺は早々に抵抗するのはやめた。
「飯はうまくつくれ」
「はぁ…。わかったよ、作りなおす」
だいたいの料理は一通りこなせるようになったが名前の好きなカルボナーラだけはどうしても彼女の好みの味には作れない。
今日も二人分か。
名前が35点と評価したカルボナーラを見つめ気が重くなる。もはやカルボナーラを作り初めてからの恒例行事だ。名前はまずいと言ったら、一切口にせず新しい物を要求してくる。一回積りに積ってキレたら知らないうちに丸め込まれてた。 名前の前から皿を下げようとしたらその手をぎゅ、と掴まれ俺は体をびくりと震わせ目を見開いた。
「…名前?」
名前をよぶと、
「…いい。今日は食べる」 「え、」
「だからさっさと一郎太も準備したら?」
名前は俺の腕を放しそう言った。
「あ、あぁ」
名前がいつもまずいと言う俺のカルボナーラを今日は食べると言った。嬉しさが込み上げ目頭が熱くなる。 そんな俺に、名前が気づいていたなんてきっと俺は知ることがないだろう。
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きっと一郎太は知らないと思う。私が彼の努力している姿を見ていたことを。私の我が儘ともとれる亭主関白っぷりに異議申し立てしながらも、私が喜ぶのならと甲斐甲斐しく私の世話をする彼。自分でもどうしてこうしてしまうのかわからないけど私の為だと努力する姿が私は好きだった。甘えているのだと自覚はしているけれど、ついつい私は一郎太へと何かしら我が儘、つまり亭主関白的態度をとってしまう。 そして今日もまた彼の作った大好きなカルボナーラを前に私は35点と評価した。ホントは味なんてどうでもよくて、一郎太が私の為にと作ってくれたことだけで十分だった。ホントは彼の愛さえあればなんだって美味しいのだ。 今日も今日とて二人分に肩を落とす一郎太を見て私の心はチクリと痛んだ。 今日ぐらいは多少味には目を瞑ろう。だって一郎太と一緒に食べれることが私にとって一番大切なことなのだから。
私がこんなふうに考えてるなんて彼はきっと知らない。
きっと愛とかそんなもので形成されている
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