言霊使いの喉




風介の銀に輝くふわりとした髪の毛を撫でつけました。彼は私の太腿に頭をのせ心地よさそうに目を塞ぐので、私も気を良くして微笑みました。

「風介、気持ちいい?」

コクリ、と頷き私を見つめる風介。私はそっと彼の首にきざまれた傷にふれました。

「ねぇ、痛かった?」

私が聞くと彼は首を横に振りました。そして口パクでゆっくりと言いました。

「へ い き だ」と。


私は、彼の首を切りました。嫌いだからというわけではなく、もちろん私は彼を愛しています。
ただ、彼の声を聴くと私はおかしくなるのです。彼の声は、言葉を紡ぐ姿はすべてが美しいのです。彼の声は私の耳へと侵入し、鼓膜を震わせ神経を通り私の脳を揺らすのです。私はそれが嬉しくもあり同時に嫌でもありました。私以外の誰かが彼の声を聴き悦に浸ることが許せなかったのです。醜い嫉妬だとわかっています。それでも思いはとまらずにはいられないのです。だから、彼の声を失くしました。首を傷つけ喉を潰したのです。
死んでしまうかもしれないと思いましたが、きっと大丈夫だとどこからともなく湧いた自信により私は行動に移しました。
結果、彼は死なずにすみました。
私は彼に病室で「ごめんね」と言葉を紡ぎました。
彼はすべてわかっていたのか私の手を握り、ただ頷くのみでした。



「風介、好きだよ」

私がそう言うと彼は瞳を柔らかくさせて言います。二度と聞こえない、聴くことのできない彼の声で、

「私も好きだよ、名前」と。

風介はいつも声の代わりに私にキスをするのです。

風介の声が失くなった今でも私には聴こえます、まだ聞こえるのです彼の声が。なぜなら私は彼の声帯を手に入れることができたのですから。
ですが、キスをしているとどこかで思うのです。
もう一度彼の声音で身心を震わせたいと。
風介が名前と名を呼ぶ声が耳に聞こえるのではないのかと。

わかっています、そんなことは二度とないことも。
すべては私のエゴなのだと。
ですが、まだ気づかないフリをしていたいのです。きっと風介もそのことを知っています。
だから私は、まだ暫く甘えていようと思います。
瞼を伏せ彼の奇麗なくちびるへと身を投じながら…。



失声








病んでる中二文を目指したので*をつけさせていただきました。
結果意味わからない文になりました。



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