雪融けのドルチェ










バレンタインネタ






今日は私達が付き合って初めて迎えるバレンタインだ。外国では男性が女性に贈り物をするなんて聞いたことがある。私もちょっとそういうのに憧れるが私の彼氏である南雲晴矢はそんなことをしてくる性格ではないのでそのへんの望みはチョコと一緒に溶かしておいた


『ラッピングおっけー!!』
最終確認をして鞄に入れる。喜んでくれるかな。
恋仲だというのに渡すときのことを考えたら心臓がトゥントゥクしてきた。

こ、これは告白のとき並に緊張する!
いやいや、早く行かないと遅刻するし、いつまでも玄関でもたついているわけにはいかないのよ。私はいつのまにこんなにチキンになったんだ。自分を叱咤し覚悟を決めて家を出た。







学校についてクラスの違う晴矢のもとへと向かう。
中を覗くと晴矢の姿を確認した。
『おーい、晴「晴矢く〜ん!ちょっといいかな?」

私が呼ぼうとしたら可愛らしい女の子が晴矢の名前を呼んだ。晴矢はなんだ?とか言ってその女の子にちょっと来てなんて言われてそのまま連れていかれてしまった。

なん、だと…?

開いた口が塞がらない。
そうか、忘れてた…。晴矢は世間で言うイケメンだからモテるんだ。ということはつまりアレだな…、あの女の子以外にも晴矢にチョコを渡す女の子がいるってことか。
ハハ、私ってば何してんのよ。トゥントゥクしてる場合じゃないよ!危機だよこれ!!

「あ、名前おはよー」

呑気に挨拶してくるヒロトの両手には大量のチョコ

『…それは?』
「ああ、これ。来るまでに渡された分と下駄箱で渡された分だよ。ちょっと大変だけどね」

困ったように笑みを浮かべて爽やかに教室に入っていったヒロト。入ってから荷物をおいてすぐにヒロトは女の子に呼ばれて行ってしまった。私はそれを見て晴矢にも間違いなく同じことがあったことを確信した。ギリギリまで待ったが晴矢は戻ってこなくて私は仕方なく教室へ帰った。
そのあとも何度か教室を訪れたがまったく会えずお昼も今日に限って別々にとることになっていたので急いで食べて教室へ探しに行ったがそれでも会えなかった。


そのまま放課後になってしまい私はぼうっとしながらぽつん、と教室にいた。

結局、一回も会えなかったな。なんで今日に限って…。いつもはお呼びじゃなくてもやって来るのに…。
腹がたつのと同時に悲しくなってきた。鞄からチョコを出し眺める。
せっかく作ったのに…。初めてにしてはけっこう上手くできたんだよ。


いろいろなことが頭を駆けめぐる。晴矢だって着いていかなきゃいいのに。
晴矢が悪い訳じゃないのに心のなかで八つ当たりをしてしまう。
あーあ、いつまでもここにいたって今日はもう会えないだろうし、さっさと帰ろう。チョコをしまい、ふと窓の外を見たら白いモノがちらついていた。
『雪だ…』

いつもならバカみたいにはしゃぐのに、今日はそんな気分になれない。
バレンタインに雪ってどんだけロマンチックなのよ。下を見ると仲良さげに帰るカップル。

『…リア充め』
私が悪態をついていると、ガラーッと扉の開く音がして振り向いたら晴矢がいた

「まだいたんだな」

『…居たら悪いの?』

うわっ可愛くない。でも仕方ないじゃん、今の私には余裕なんてないんだもん。
「何怒ってんだよ。なんかあったのか?」

なんかあったのかだって?

『ッバカヤロー!!このアホチューリップ!』
「なっ!?」

私は我慢ができず爆発した
『なんかあったじゃないわよ!!こっちは一日中晴矢を探してたっていうのに、アンタはずっと居ないし、』
あー、最悪だ。涙なんかもちょっとでてきた。
『か、可愛い女の子に呼ばれて、ホイホイついていくし、』
思っていたことが次々と出ていく
『どうせ、ッチョコ貰ったんでしょ。よかったね、モテモテで。』

私は鞄を乱暴に肩にかけた
『じゃーね』

フンだ!!自分で食ってやる私が帰ろうとしたときガシッと腕を掴まれた。

『!?なによ。離し「…ってない」は?』

「だから、チョコなんて貰ってない」
『……』



はあぁぁぁ?!
『じゃあ、なんで今日ずっと居なかったのよ!』

「チョコ返しに回ってた」
うそ…、

『じゃ、じゃあ、朝呼ばれてった可愛い女の子は?』
「…ああ、あれも断ったけど」
ケロリと言われて、私はぽかーんと効果音がつきそうなくらい呆然とした。

え、つまりなに?全部私の被害妄想?嫉妬?うわ!!なにそれ、超めんどくさい女じゃん!


…嫌いになったかな。
私はさっきの威勢はどこへやら、ずーんとしずんでしまった。しずんでいると晴矢が手を差し出してきた。

『え?』
「ん。くれんだろ?名前のチョコ」
ニッと笑って私に出すように促す晴矢。私は鞄からおずおずと差し出した。
受け取った晴矢はさっそく開け一つ口に放り込んだ。食べている間暫しの静寂がおとずれる。



おいしいかな…。不味かったらどうしよう。
ごくり、と飲み込まれ私は顔をあげた。
『…どうだった?』
「ん、うまかった!」
その言葉だけで私の心はさっきまでのジメジメ感はどこへやら、すっきりとした晴天へとなった。

『晴矢、ごめんね。それと、…大好き!』
「ッなんだよ、急に。…その、俺もおまえのこと大好きだ」
はにかんで言う晴矢が愛しくて愛しくて、私たちはどちらからともなくキスをした。私の口には甘いチョコの味がひろがった。

「帰るか、名前」
『うん!』






二人で手を繋ぎあって、雪の降るなかを歩いて帰った。



Happy Valentine










バレンタインにあわせて頑張ってみたんだがリア充すぎた^P^



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