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■■は落ち着かないで部屋の中を行ったり来たりを繰り返していた。
バーボンが仕事で留守にすることがあっても、こんなに家を空ける日が続くなんて殆どない。
出掛ける前にあれだけバーボンに強く抱きしめられ、不安を打ち払う言葉も貰ったのに初日で挫けそうになった。
気を紛らわすために何度も同じ所を掃除をしたり、すぐに仕事が終わり帰ってくるのではないかと玄関先で待ったり、ベランダからバーボンの車が見えないか眺めたり色んなことをしたが時間だけが虚しく過ぎて行った。
バーボンが仕事に出て行ってから8日目の夜。
『バーボン今頃どこにいるんだろ・・・、トラブルでもあったのかな』
自分のベッドでゴロゴロしているが眠れそうもなく、不安だけが大きく膨らんでいった。
想像以上に辛い現状で、自分の部屋で一人寝るのが耐えられなくなり部屋を出た。
■■は、バーボンの寝室の前に立って、ゆっくりとドアを開け中に入った。
掃除のとき以外はあまり入ったりしなかった■■だったが、不安と寂しさのあまり入ってしまった。
『・・・いるわけないよね・・・っ』
寝室に行けば、バーボンがこっそり帰宅していると思っていたがそれはなかった。
静かな寝室に■■はベッドに腰掛けるとベッドが軋む音がした。ベッドシーツを指でなぞりながらバーボンの事を思う。
いつもなら家のどこにいてもバーボンが居て■■に微笑んで優しく頭を撫でてくれるのにその温もりが恋しく感じた。
『早く逢いたいよ・・・』
■■は横になると想いを呟きながら瞼を閉じた。
記憶を辿りながらバーボンの姿や声、仕草、感触をひたすら記憶の糸を手繰り寄せた。
彼女はこの数日、充分な睡眠を取っていなかったため深い眠りへと
誘われた。
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「・・・遅くなってしまった」
急いで帰宅するバーボンは玄関のドアを静かに開けると、家の中は静寂と化していた。
足音を極力出さないように歩くバーボンは■■の部屋のドアを開けるが姿が見えなかった。
まさか自分の寝室にいないだろうと思いながらも寝室のドアを開けると彼女がベッドで横になっている姿が目に飛び込んできた。
気配を殺し、彼女の傍に行くと小さな寝息を立てながら涙を零して眠っていた。
「ただいま、■■」
優しく流した涙を拭い、そっと寝室を出て行った。
バーボンは書斎に荷物を置くと目頭を押さえてリビングへ向かった。
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