「あら、そこまで言うのなら、ちょっとは興味湧くわね」

初めてこちらの存在を意識に入れたように、少女は前のめりになって朱里と小夜の顔をじっと見つめてきた。

まるで値踏みでもするかのような怪しい光を放つ深海色の瞳に、朱里は居心地の悪さから視線を外して紅茶を一気に喉に流し込む。

「そういえばあなたたち、自己紹介がまだだったわね。まずはそっちからしてちょうだい」

「あっはい!私は小夜と言います。それで…」

小夜がちらと横を向くと、朱里は覚悟を決めた横顔を上げて、

「俺は朱里。どうぞよろしく」

これまた覚悟を決めたかのように、簡潔に言い放った。

小夜が乗り気である以上、今回の仕事は避けられそうもないと、ようやく思い知ったようである。

思えば小夜が朱里の腕を引いて、自らこの屋敷に足を踏み入れた瞬間から、この護衛は決定事項になってしまっていたのだ。
それほど小夜の今回の仕事への意気込みは、目に見えて強かった。

少女は二人の自己紹介に満足そうに目を細めると、形のよい口元にわずかな微笑を浮かべて、

「私はリーズよ。今回のエアまでの護衛、あなたたちに任せることに決めたわ。せいぜいそっちのお嬢ちゃんの言うとおり、仕事を完璧にこなせるよう死ぬ気で頑張ってちょうだいね、お坊ちゃん」

愛らしい笑顔とは正反対の、人を超絶馬鹿にした挨拶でその場を締めくくったのだった。




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