暗鬱とした気分を振り払いながら、朱里は尋ねた。

「で、その聖夜ってのは、具体的に何する日なんだ?」

「ええとですね、ケーキを食べたり…」

「まぁ、ここじゃ無理だな」

きっぱり言う朱里に、小夜は困ったような顔をして、

「えっと、じゃあ…プレゼント交換をしたり!」

「それも、無理だろ。ここにあるのは、それこそ雪だけだし」

あえなく否定されて、うぅ〜とうめく小夜。

朱里はそんな小夜の姿に、ひそかに笑いをこぼしながら、

「じゃあ、もしプレゼントもらえるんだったら、お前は何がほしい?」

こんな場所にいるんじゃ、連想ゲームくらいしかできないが、と考えて出した質問だったが、思いのほか小夜は興味を示した。

「えと、えっとっ…一番私が欲しいプレゼントは――」

まるで子どもがおもちゃを買ってもらえる前の、期待に満ちた表情を浮かべている。
実際もらえるわけでもないのに、かなりのはしゃぎようだ。

小夜は軽く手を合わせて、にっこり笑顔をこぼした。

「――朱里さんが欲しいですっ」

「………はぁ!!?」

まさか小夜の口から、こんな衝撃的な言葉を聞くことになろうとは。

あまりの動揺に、朱里は口をパクパク動かすことしかできない。

(ちょっと待て、俺って…俺がほしいってどういう意味だよ!?)

狭い小屋の中でたった二人きり、という意識し始めるとどうしようもないシチュエーションが、小夜の言葉に妙な現実味を与えているのだ。


「…だめですか?」

上目遣いで朱里を見つめる小夜。
朱里は思わず座ったまま後ずさった。

「だっだだだだめっていうかっ…俺なんかもらってどうすんだよ!?」

壁際まで下がると、半ば叫ぶように尋ねる。
その顔は言うまでもなく真っ赤だ。

小夜の口が開かれるのを見つつ、朱里は吹雪の中に飛び出すことも覚悟した。


そして、案外あっさり小夜は即答した。


「えっとですね、ずっと一緒にいてもらいますっ!」


「…いっ、しょ?」

予想外の健康的な返答に、目を丸くさせる朱里。

もっと不純な理由を想像していただけに、理解も遅い。

「はいっ!いつも隣には朱里さんがいてくださるんですっ。それで、ときどき手を繋いで下さったりしたら、もっと素敵です!」

胸に手を当て、小夜はすっかり想像に思いを馳せている。

(あーなんだ…)

正直なところ、なぜかがっくりしている自分を感じながら、朱里は再び膝をついたまま暖炉の前に戻った。


側で何やらいろいろ思い描いている小夜に、今度は自分がさらりと言ってやる。


「それならもう叶ってるじゃん。俺お前の横にいるし」


我に返った小夜がはたと朱里を見る。

「あ、そう言われれば…。では、私はもう朱里さんを頂いたってことですねっ!ありがとうございます!」

「いやいやいや、礼なんか言われても…。だいたい言葉が悪い!その言い方だと、聞く奴が聞いたら変な誤解受けるだろうが!」

誤解と言って真っ先に思い浮かぶのは、師匠とジライである。

あの二人が小夜の言葉を耳にしたら…間違いなく師匠は「まだ早い」とか言って、自分をぶん殴るだろう。ジライは…きっと赤飯とか用意してるに違いない。


「…お前さ、それ以外に何か欲しい物ねえのかよ」



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