普段とは違う雰囲気の小夜をしげしげと眺める朱里の態度に、小夜は恥ずかしそうに睫毛の影を落とす。
「…や、やっぱり変でしょうかこの格好…。朱里さんからいただいたお小遣いを貯めて、ようやく今日買えたんですが…」
自分の知らないところで“はろうぃん”とやらのために頑張っていたらしい小夜の行動が何ともいじらしく思えて、朱里は頬がわずかに緩むのを感じた。
思わず視線を落とせば、無意識に目は小夜の白く華奢な足に注がれてしまう。
(これは…イ、イタズラされるっていうより、むしろこっちがしちまいそうな……あ、なんか今俺…変態なこと考えた?)
自分の危うい思考に動揺しつつ、それを誤魔化すように咳払いをする。
前ではいまだ不安げな表情を向けた小夜が、自分の反応を待っているようだった。
…さて、どうするべきか。
似合っていると褒めるべきか、否か。
いや、似合っていないと言ったらそれは間違いなく嘘になる。
イメージ的に小夜は白だと思い込んでいたが、よくよく見ると意外に黒もありだ。
というか、小夜のミニスカは全般的にありだ。
「…うっ、なんかめまいがしてきた…」
明らかに自分という人格が崩れつつあるのを自覚し、朱里はこれ以上の思考を強制終了した。
「それはそうと、さっき“はろうぃん”は色んな家を訪ねてくって言ってたが、他の部屋にそんな格好で行ったりするんじゃねぇだろうな?」
「は、はいっ、それはもちろんここだけですっ!これは朱里さんにお見せするためだけに頑張って用意したものですからっ」
赤い頬で恥ずかしそうに笑いながらそう言われれば、朱里が強制的に押さえ込んでいた変態的思考が再び頭を出すのも当然のことで…。
「…っいやいやいや、駄目だ俺!こいつの格好に惑わされるな!理性を保て!」
頭を抱えて必死に何かを自分に言い聞かせようとする朱里の前で、小夜はあどけなく首をかしげている。
朱里は小夜の格好を見て思い直した。
――魔女というより、今のこいつは小悪魔だ…。
人の葛藤も知らずに無防備な姿でちょこんと立つその姿。
それは今の朱里には、小悪魔以外の何者でもなかった。
「…うぅ、はろうぃんって…怖ぇ…」
その後朱里の葛藤は、小夜の一緒に寝たいといういつもの懇願によって、さらに夜通しで続くこととなった。
彼の頭の中の辞書に、ハロウィン=苦悩と記されたのは、当然のことかもしれない…。
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