「はいっ、せーの!」
『いただきます!』
食卓には子どもたちと小夜が協力して作った、渾身の手料理が並べられていた。
本日の献立は、畑で採った新鮮な野菜サラダに、湯気が湧き立つ熱々のクリームシチュー。
「お前ら結構いいもん食ってんなぁ」
感心するような顔で、朱里が思わずといった風に呟く。
「今日は特別だよ。新しい仲間を迎えた夜だから」
さらりと答えた後で、チカは自分が当然のように放った"仲間"という言葉に、頬を上気させてうつむいた。
照れを誤魔化すためか、握ったフォークで無意味にサラダをつついている。
それをフォローするかのように、朱里のほうに身を乗り出したのがクロウである。
「それにさ、今日のごちそうは、頑張った俺へのご褒美でもあるんだぜっ!」
満面の笑みを惜しげもなく露わにするクロウ。
その表情を見てみれば、特にチカのフォローというわけでもなさようだ。
スプーンでシチューをすくったりこぼしたりしているその顔は、自慢げに隣のキースに向けられた。
「なっ、そうだろ?」
「さあ?もう忘れたなあ。兄ちゃんにしがみついて、クロウが泣きべそかいてたとこならしっかり覚えてるけどね。あのときのお前、鼻水まで垂らしてたよな」
未だ腹部に痛みが残っているはずのキースが、涼しげな顔でさらりとクロウの痴態をばらしてしまったものだから、食卓には思いがけず笑いの渦が湧き起こった。
「わっ笑うな、お前ら!あっ、姉ちゃんまで!」
顔を真っ赤にして叫ぶクロウの向かいの席では、小夜までもが耐え切れないように口に手を当ててくすくす笑っていた。
「す、すみませ…つい鼻水が面白くて」
無邪気に笑う小夜に朱里が一言。
「お前もついさっきまで、鼻水垂らしてた同類なんだけどな」
「……っ!?あっあれは、その…!」
小夜の顔が目に見えて一気に耳まで赤く染まる。
「俺は鼻なんて垂らしてないっ!」
「わっ、私も垂らしてませんっ!」
茹でダコ状態の顔をさらして必死に否定する二人だったが、一旦起こってしまった笑いの洪水はしばらくの間、収拾の目途もつきそうになかった。