「久しぶりに見たなあの夢…。やっぱここにいるからだろうな…ふわぁ」

あまり深く考えないように首を鳴らして、朱里は「よし」と気合いの声とともにベッドから立ち上がった。


今日一日はこの町を歩き回って情報を集めなければならない。
昨日のように絡まれても、変に動揺しては駄目なのだ。

自分に言い聞かせるようにうなずくと、着替えをすませて朱里は部屋を出ていった。


****



朝食を適当に済ませて、朱里と小夜はさっそく情報収集のため町の中心を走るにぎやかな大通りへ向かうことにした。

朝早いということもあり、大通りへ繋がる細道はほとんど人の姿がない。
大きな欠伸をしながら歩く朱里と、地図を片手にその後を追う小夜くらいだ。


「ええと、大通りというと、この先の……あてっ」

地図を広げつつ器用に歩くという芸当ができない小夜は、案の定こけていたりする。

「お前はもーほんと…」

それにいつものように手を差し出してやりながら、朱里は小夜から地図の紙を奪い取った。

「あっ、地図!」

「今は見んのやめろ。さっきから何回こけてんだよ」

どうやらこれが今日初ではないらしい。
宿を出て真剣な顔で地図を見始めた小夜は、至るところで転び、つまずきを繰り返していたのだ。

「俺がこの町のこと詳しいんだから、地図なんて見る必要ないだろ?」

立ち上がらせた小夜の膝小僧は、幾度もの転倒により血が滲んでいる。ちらっとそれに気付いた朱里は、小夜の足元にひざまずいて、コートのポケットから取り出した絆創膏を膝に貼ってやった。

「す、すみません。でも地図の見方くらい、そろそろ覚えたほうがいいような気がしまして…」

すまなさそうに自分を見下ろす小夜に、朱里は顔を上げて、

「学習意欲だけは認めてやる。でもこのまま地図見て歩いてたら、お前の足血だらけになるぞ。言っとくけど俺そんなに絆創膏持ってねえからな」

怪我した小夜の膝を軽く叩いて立ち上がる。

「また宿に戻ってから見りゃいいじゃねえか。俺が教えてやるよ」

「えっ、ほんとですか!?朱里さんに教えていただけるなんて幸せ者です!」

なんとも嬉しそうに笑って手を胸の前で組む小夜に、朱里はつい吹き出してしまった。

「お前、大げさすぎ」


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