****



さすがに秋にもなると夜の訪れが早い。ついさっきまで夕焼け色に染まっていた町が、今ではすっかり闇の底に沈んでいる。

宿の三階にある朱里の部屋の窓から下界を見下ろしていた小夜は、くるっと後ろを振り返った。
部屋にただ一つのテーブルについて、何かを真剣に見つめる朱里の横顔が見える。

「何を見られてるんですか?」

横からのぞき込むようにテーブルの上に目をやると、カレストイの町の地図が広げられていた。

小夜は地図の見方については無知といっていいほどだったが、なんとか地図の左端に“カレストイ”の文字を見つけて、朱里がどうやら宝探しの仕事をする気なのだと察した。

「宝物、探してくださるんですか?」

嬉しさに弾んだ小夜の声に、朱里が顔を上げる。

「あったり前だろ。そのためにここまで来たんじゃねえか。明日からは情報集めに専念しねぇとな」

言って指先でトントンと机上の地図を叩いた。

その顔には余裕の笑みさえ浮かんでいて、小夜は心中ほっと胸を撫で下ろす思いがした。


よかった、いつもどおりの朱里さんだ…。


安心感から頬を緩ませて朱里を見ていると、その視線に気づいた朱里が焦ったように声を出した。

「い、言っとくけど違うからな。仕事のためであって、別にお前のためってわけじゃねえからな!!そんな嬉しそうな顔すんなよ!!」

どうやら小夜の笑顔の理由を、勘違いしているらしい。

手を前に突き出して激しく振る朱里の姿に、さらに笑顔の花を咲かせる小夜だった。


元気になってくれてよかったです。




「そういや、お前」

しばらく地図を眺めていた二人だが、突然思い出したように朱里が小夜に顔を向けてきた。
小夜は朱里の横の椅子に腰掛けている。

「はい、なんでしょう?」

「お前さぁ、外にいたときなんか見つけたんだったよな。素敵な場所とかなんとか嬉しそうに叫んでたけど。何見つけたんだ?」

ああ、と小夜は笑って答える。

「公園です。すごく綺麗な噴水のある公園を見つけたんです!それでぜひ朱里さんにもお見せしようと思いまして」

「公園?ああ、あそこか」

納得したように軽くうなずいて、朱里は地図の上を指でなぞった。
止まった先を小夜がのぞき込む。

「そこが公園なんですか。うわあ、地図で見ても大きいですね」

線で四角く区切られたその範囲は、町の中でも一際広大なのが見てとれる。

素直に驚く小夜を横目に、朱里は苦笑してみせた。

「まぁ、この町で唯一の観光場所だからな。あの公園には町ぐるみで力入れてるのさ」

へええ、と返事をした後で、小夜はあれと首をかしげた。

「朱里さん、この町のこと知ってるんですか?あ、もしかして前に来たことがあるんでしょうか?」

「ん、まあ…。来たことがあるっつーか、ここに昔住んでたことがあるんだ」

地図に目を向けたままさらりと言い流した朱里の横顔を、小夜は驚きの表情で見つめた。


prev home next

7/117




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -