洞窟に到着し、小夜は自分がいるべき場所に座り込んだ。それっきり師匠たちは去っていった。

本当に一人になったのだ。

周りは恐ろしく静かで、じっとしていると静寂に呑み込まれそうな気さえする。

小夜は無意識のうちに胸元のネックレスをぎゅっと握った。


どうしてこんなことになってしまったのだろう。
何がいけなかったんだろう。
一体なぜ嫌われてしまったのか。

分かっていることはただ一つ。

自分はもう、彼にとって何でもない存在なのだという事実だけだ。

それならばなぜこんな賭けに乗ってしまったのだろう。


死にたがっている?


実際自分にはもう彼以外何も残っていない。
自ら国を捨てて彼についてきたのだから。

彼にいらないと言われたら、自分は。


震える肩を両腕で抱いて、小夜はきつく目を閉じた。
これ以上考えてはいけないのだ、というように頭を振る。

すべては朱里が決めることなのだ。自分はここで大人しくしているしかない。

気を抜くと、眠気が小夜を襲ってきた。

小夜はそれに逆らうことなく、ゆっくりと深い闇の中へ落ちていった。


****



「ねえ…まさかとは思うけど、死ぬって本当かい?」

宿への帰り道、ジライがぼそっと眠たげな声で尋ねた。もっとも彼の声の調子は常にこんな感じだ。

「あぁ?嘘だとでも言うのかよ。あんな場面で言った言葉が」

師匠は眉をひそめて答えた。

ジライは前を向いたまま、

「嘘だね。悪いけど君の性格は把握してるからね…。そんな簡単に人を死なせたりしない。特にあんないい子はね…。なにか策があるんだろう?とりあえず僕は傍観者に回らせてもらうよ…」

すたすたと前を歩いていくジライの後ろ姿を眺めながら、師匠は苦笑して呟いた。

「食えねえ奴だな、ほんと」


ゆっくりと太陽が姿を現し始める。

新しい一日が、今まさに始まろうとしていた。



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