何を言おうが一向に状況は変わらない。むしろ悪化しているような気もする。
俺も昔はこうだったのかな。
そう思うと朱里は、軽々しく子供たちの手を払いのけることもできそうになかった。
これが子供の性ならば、自分はそれに付き合うしかないだろう。
「はぁ…。で、何したいんだ」
気持ちが沈んでいく朱里とは裏腹に、子供たちの顔は一気に輝いた。
嬉しそうに三人が一斉に口を開く。
「格闘ごっこ!!」
見るからに朱里は気を落とした。
夜はまだまだこれからだ。
どんっ、という物音で小夜は目を覚ました。
まだ夜が明けていないことは、部屋の中が暗闇に包まれていることから明らかだ。
なんだろうと上半身をベッドから起こして周囲を見回す小夜の耳に、またしてもその音が響く。
どうやら壁の向こう、つまり隣の部屋から音は聞こえてくるようだ。
「隣…朱里さんのお部屋…?」
首をかしげた小夜の耳に、今度は人の声が届いた。それも一人のものではない。複数の声だ。
それを聞いて小夜はやっと周りに子供たちがいないことに気付いた。
声の主は朱里と子供たちだろう。
では、みんなで何をしているのか?
しばらく考えていた小夜だが、睡魔に抗うことができずあっさりとベッドに倒れ込んだ。
そのまま夢の中へと旅立っていく。
隣からはまだ、物音と人の声が聞こえていた。