Revision Affair Folktale [3] | ナノ
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Revision Affair Folktale [3]


「おい……そんなに待てねぇか?」
「……おまえが悪い……っ」

 後部座席で繰り広げられてきたのは、下半身はスラックスも下着もずらし、高く掲げた白い尻の谷あいに長く細い指を這わして奥へと出し入れする発情した恋人の痴態だった。

「んう……もっと、奥っ!……届かない……京一っ……!」
「……ち、仕方ねぇ……もっとこっち向けろ」
「ア!」

 後部座席から運転席と助手席の間に尻を突き出させられる。向き直った京一が、更に尻を割り、先刻明智平で己の指が散々好きなように弄った陰部を虚空に晒した。そこに熱く濡れた舌が這う。

「あああ……ああ、いや……」
「嫌なわけあるか。舌に吸い付いてくるぞ」
「そん、なこと、言うな」
「ふん、言葉で嬲られるのも好きな好きモノめ」

 ピチャピチャと音をさせて京一の舌戯が涼介の切なげに寄せられた眉間を解く。更に唾液で濡らされた太い指を挿れられ、涼介の歓喜の声が上がった。

「中はさっき弄ってやったから、けっこう拡張されているな」
「……だったら早く! おまえの×××をぶち込んでくれ……っ!」

 涼介の勃起しきった性器はビンビンと揺れて、先端から粘った透明の液体を垂らす。

「わかった、わかった……しかしこの体勢はな……」
「エボから降りたらいいだろう!」

 ふと場所が先程見かけた乱交会場に近いゆえに京一は一瞬考えたが、涼介の悲鳴にも近い懇願を聞いて仕方ないなと運転席から車外へと降りた。




 煙草をくわえながら、男二人が茂みを歩く。左に曲がれば馬返しに向かうところで、いろは坂を下ってくるクルマの音に重なって、やたらに至近にクルマのドアが開く音が聞こえた。佐竹がきょろきょろとしながら呟く。

「? 誰か来たのかな?」
「チームのヤツがまた女拾ったんじゃねぇの?」
「ホテルまで遠いからなあ、このあたりで青姦になっちまうのは仕方ねぇや」

 二人はヤレヤレというポーズで笑いながら、音がする方へと数歩進んだ。チームの人間ならからかうのもよし、女が好みならこっちに参加しないかのオファーも気軽にするつもりだろう。

「ん? 見えにくいな。暗い色の…ありゃエボのアイドリングだ。佐竹、俺たちのお仲間だぜ」
「チームの誰だぁ? 女がいいと行ったら参加してぇなあ〜〜」
「おまえしょんべんどうしたよ」

 笑いながら茂みから先を見た二人は「は……」と言葉を止めると、ささっと茂みに隠れた。

「おい! ……あれ」
「しっ……あれヤバいって!」

 二人が青ざめて見る先には。闇より暗い色の、だが僅かな外灯からの青白い光を鋭く反射して、低いアイドリングしているクルマの後ろ姿だった。特徴的な四角張ったウィング、リアガラスには白く刻まれたEmperorーーーー皇帝の文字。

「きょ、きょきょきょきょ京一さん??!!」
「えっ……なんでここ……まさか俺たちみたいに京一さんもっ……?」
「しっ……静かにしろ……京一さんの青姦……か」
「ええ……そりゃ、モテるだろうし、京一さんだって男だしなあ……清次さんなんか入れ食い状態だし、京一さんだってなあ……あ」
「佐竹、隠れろバカ」

 びくびくしなら頭を隠す。しかし、目はしっかり前方のクルマに向く。二人共がどうしようかと悩んでいるといきなり声がしたと思ったら運転席のドアが開いた。

「きょっ……!」
「しっ……!」

 運転席から降りたのは短い金髪の上背のある軍人のような偉丈夫だった。なにやらブツブツ言ってるかと思うと、おもむろに後部座席のドアを開ける。

「……!」
「……?」

 男二人が息を飲んで、開いた後部座席を見つめる。しかしちょうど京一が立っていて中は見えない。

「ゴクリ」

 男二人の生唾を飲む音が異様に大きく聞こえたのは。
 京一が二、三語何かを言ったかと思うと。

「……」

 後部座席からすっとベージュのトレンチコートらしきものを着た腕が伸び、京一の前で何かをし、よく見えないが艶めいた黒髪が京一の前に隠れた。それに腰を寄せた京一の、背から尻に腕が絡まるのを見たからだ。

「フェラさせてる……」
「よな……」

 あの渋みを纏い、ストイックで鉄人とも言えるほどに禁欲的ながら、荒々しい男の色気を持つ京一はEmperorメンバーの憧れだ。その男が本能のままに、エボの屋根に右手を置き、しがみついた腕の主の口を軸に微妙に腰を動かす。排気ガスが僅かに白味を帯びて視界を燻らす。

「……たまんねぇな、おい」
「なんか……アダルトで……俺らの青姦なんか子供の遊びに見えるな……」
「ああ……なんか空気からエロいつうか、ヤバい……」
「あんな渋いフェラなんて初めて見たぜ……」

 自分を飲み込み、水音をさせてけっこう激しく動く人間の頭部を左手が手懐けるように愛しげに撫でる。その時間が暫く続くと、京一の左腕と左肩が何度か動き、腰が前に数度蠢く。そして、そっと頭を離させ、事に移ろうと後部座席に乗り込もうとする京一の背中や腰が見える。
 暗いエボの車内に、ベージュのコートらしきものが助手席あたりに投げられたように見え、シャツを着た白く細い腕が逞しさを伝えるブルゾンの背に悩ましげに絡み、答えるように京一の背や腰が動くのが闇に溶けていった。

「おい野田……どうするよ……女とヤッてる京一さんの邪魔できねぇし」
「こっそり、馬返しまで行って戻ろうぜ。小一時間あれば京一さんもどっか行くと思うけど」

 男達は二人、顔を合わせる。

「とにかく、これを女達に知られたら、日光の皇帝・京一さんともさせろと騒ぐのは目に見えてるから、なんとか自分達の精力、体力で女達を満足させよう」

と、いう結論になった。



「ああ……素敵だ……濃くて……」

 口淫して美味しいものを味わい、満足して舌舐めずりしている涼介の口蓋を、キスでさらに蹂躙した。
先程のフェラチオもすぐに緩めたカーゴパンツから取り出しては、まだ猛りきっていないソレを嬉しそうに舐め回した。どこの商売女だ、と京一にからかわれても目が正気でない熱を帯びてフンフンと鼻を鳴らす。どんどん大きく、逞しくなるそれに熱い溜息をつきながら、熱心に唾液たっぷりの舌を閃かせ、ここもオレのものだと言わんばかりに睾丸まで舐めしゃぶり、口に含んでは転がす。
 苦笑する京一の手が大きく口を開けて己の性器を飲み込み、顔を上下させる涼介の艷やかな黒髪を撫でる。暫く口内をピストンさせ、舌を絡みつかせる。
 まるで口で性交してるように妄想し、うっとりとした涼介の口を大きく開けさせて、貪欲に蠢く桃色の舌の上や喉の奥に。白い線状を扱いて放った。
 喉を鳴らして飲み、まだまだ欲しいと割れた先の孔から滲みる白い粘液を舌で掬う。
 そして、遂に交合できると、嬉しそうに甘い声を出しながらどんどん脱ぎ、脱がせられをして、涼介は下半身は裸で、上ははだけたシャツだけだ。
 
「ああ……やっと……」

 ずっと欲しかったものがやっと貰える。そんな嬉しそうな悪戯な目をして、涼介は京一にしがみつく。それを器用に受けながら京一は涼介の身体を大きな手で撫で、首や鎖骨に唇を落として行く。

「そこ、も……おまえが……そんなに」

 開発した。涼介はここがそんなに敏感に性的な官能を起こすとは知らなかった。ある程度までは自覚していたが、京一に触れられるともうだめだ。

「かわいく尖ってるな。舐められたい、いじられたいんだろう?」
「ああ……いや」

 ピンピンと舌と指で弾かれて腰が甘く疼く。落ちていきたいような甘美な痺れが、涼介の腰を捩らせる。

「雌化が進んでるな……いい傾向だ」
「オレ、は……男、だ……」
「確かにな。だが、おまえは乳首を責められて善がりまくる男だ。そしておまえは俺の、いろはの皇帝の后だ」
「なにを……ああ……」
「后の乳首も××××もじゅうぶんに可愛がって愉しませてもらうぞ。そうだろう? 高橋涼介……俺にいじられるのを想像して、いつも白衣の下で乳首を尖らせてるのか?」
「ああ……そんな……!」

 おまえは女と同じと貶められている気もする。それが辱められているようで、陰核と同種の器官である男性器が疼き、ヴァギナでもないアナルがジンジンとする。
 女でなく平らなのに、胸を、乳首をもっと悪戯されたいと突き出す。
 京一の言う通りだ。自分は性欲なんて知らないという顔をしながら、雌が発情したように京一との浅ましいセックスを想像しては湧き上がる疼きに悶え、興奮している。周囲には素知らぬ顔をしながら。医学部で、病院で。胸をいじり、性器を握り、後ろに指を入れてひっそりと慰めたことも数多い。

「はやく!……きょういち……!」

 淫らに繋がった性感は、胸からの刺激を後孔にさらなる快楽への期待を持たせ収縮させる。涼介は我慢できずに京一に足を開き、濡れた陰部を開いて見せつける。京一は収縮するそこを見ると、にやりと笑って涼介の膝裏を持ち上げた。



 エボVのサスペンションが揺れる。けっこう固めなのにそういう運動をしているからだ。まずはとりあえず一発くらいはキメておかないとずっとうるさいだろうし、悪戯して火を点けた自分のせいもある。

「ああ…っ! ああっ…!」

 白い足が跳ね上がってエボの屋根に当たりそうになるほどに、京一の腰に打ち付けられる。京一が少し引き抜くと、いやだと言わんばかりに足が絡んで抜けるのを防ごうとする。わかったわかったと押し付けると接合が深くなり、中が心地よく震えだす。
 京一は身を起こし、繋がったまま着ていた革ブルゾンを脱ぎ運転席に放った。下に着ていた黒いトレーナーから伝わる、筋骨隆々とした京一の体の厚みがよくわかって涼介は中を締め付けた。

「おいおい、こんなに欲しかったのか……中が熟れまくって熱いぜ涼介……」
「アアッ! アアッ! 京一、イ、もっと京一のでかい×××ハメて、くれ! ××××に、オレのいやらしい××××に!」

 ぎゅうぎゅうとまるで下で口淫されてるようだ。引き込もうと蠢く粘膜を抵抗するように引っかき、突き崩すと涼介の口からあられもない言葉が飛び出す。
 はしたない言葉、単語、それも淫らな言葉ばかり。あの普段は取り澄ました高橋涼介が、男であるのに雌の情欲にまで絡み取られて、涎を垂らして叫ぶ。

 長大な逞しい筋張りが、激しいスピードで白い丘の狭間に入っては出てを繰り返す。濡れ光って、それはとても凶悪な男根だ。右に左に、深く浅く、粘膜を好きなように蹂躙して中の熱さを楽しむ。

「おまえの、××××は本当に具合がいいな……。よくデキ上がって病みつきになるな、こりゃ……」

 口端を歪めて京一は苦笑する。しがみつく涼介は既に挿入時に絶頂を迎え、今でも何度もイッているようだった。すりこぎで漕ぐように回してやるとすすり泣く。そして、そろそろかと、激しい直線ストロークに移る。

「ヒ、……ィあ、アアアーーーーーーーーー……」

 のしかかった体勢で杭を上から打ち込みながら、目は朦朧と霞み、蕩けた顔の顎を掴んで強引にキスをする。京一の口腔内に涼介の切羽詰まった、なのに悦びに甘く翻弄される叫びが響く。
 口と性器での粘膜同士の交合、舌を掻き回され、体液を混ぜ合わせ、下半身も同じく一つに糖度高く融解してとろけて堕ち、青白くスパークして蒸発する。

「ひょ、……、ち、……んん、うう、アアア――――――……」

 ずっと張り詰め、涎を垂らして跳ねる性器を京一の手が扱きにかかる。途端にいっそう声に甘さが響く。

「おまえの××××も×××も、皇帝のモノだ涼介」
「ああ……っ、ああ、ア! ……ああっ!……ああ」
「俺に抱かれにっ、来るおまえは、俺だけの獲物だ……!」

 まるで刻印を刻むように激しく突き込みながら、雄の本能のままに爽快にも見える情欲の炎を燃やした目でしっかりと見つめられ、宣言される。
 とても強引だ、とてもサディスティックだ。なのに、顎を掴み撫でる手は優しく温かい。
 心から、それが欲しかった。今自分を熱い快楽の奔流に巻き込むこの逞しい体躯も。
 今、与えられて至福に満ちる。

 おまえが好きだ、おまえもオレを愛せと全身が叫んでいる。

 好きにされたい。Fuckされたい。抱かれたい。愛されたい。打ち込まれるたびに色々な感情が綯い交ぜになって渦巻き、思いは甘くまばゆく――――――。

「……はるか昔からずっとな……」
「あああ、アッアッアッ……イク、う、ああああーーーーー……」

 そうだ。古来から逞しい日光の男、その長となる皇帝の祖。日光の神に赤城の神は……聖なる水を湛えた美しい場所。そこから見えるあの姿、それが欲しくて……。

 煌めく銀の鱗が舞って絡み取られて、今でもその腕に抱かれていたじゃないか、と。

「おまえ、も……オレの……」

 今世こそは必ずそうなれと、赤城の神の射抜かれた左目から一筋の涙を流した。



 バタン、と重い音がしたと思ったらすぐに重厚なサウンドを響かせて漆黒の覇者であるクルマはその場をあとにした。しっかり満足した身体はそれでも、もっとじっくりと二人になりたいと、後部座席で微睡んでいる。まだ足らないだろうと思うゆえに軽快に飛ばす。
 
 エボVの残響――――この地を統べる皇帝が操る愛機の吠える破裂音は大谷川と男体山のふもとに木霊した。



「ふ〜〜〜、なんとかなったな。もう×ンタマがカラだぜ」

 Emperorの男たち三人は文字通り、女たちが我が皇帝の房事に気が付かないよう、それこそ精力、体力、技を使って励んだ。途中、気をやった女もいたし、それこそ三対三であっても、女二人を相手にしたり、女一人が男二人を相手にしたり、開いた手や口で奉仕したり、もう何がなんやら、AVの世界まんまになったようで狂乱の世界だった。

「おい、おまえらも疲れたろうけど、俺たち行くからよ。流石にこのままこんな格好のおまえらを放っておけないから、しっかりしてくれよ」

 野田が素っ裸でぐったりした女を起こす。急いてはいても、買ってきた飲み物を渡し、体液を拭ってやる。扱いは優しく。そこは京一たちにしっかりと叩き込まれている。

「うう〜ん、ああん、みんなはぁ?……」

 一人が目が覚めると、次々に女たちは起こされていった。


 
「おっつかれ〜〜〜!!」

 機嫌よく声をかけたのは明智平駐車場に登ってきた佐竹だ。野田、古賀も続き、轟音を立てながらエボを乗り付ける。明智平には数台の勇壮な外観のエボがいた。それらには皆、Emperorと書かれたステッカーが貼ってある。この日光の皇帝の元に集う、皇帝を誇りに思うという証しである。

「おお、佐竹。やっと来たか、何時間ヤッてんだよ、おまえらは本当に〜〜」
「わりぃわりぃ中原。女三人だし、ちゃんと満足させてやるんだから時間もかかるってもんよ」

 頭を掻きながら佐竹が言う。野田も古賀もエボを降りて、輪の中に入り笑い合う。

「三対三かよ……っんとに、連日よくヤルわ。そう言えば京一さんもここに来てたんだぜ」
「えっ、いつだよ」
「さっきかよ?」

 中原が呆れながらに言った言葉に、野田と佐竹、表情の読みにくい古賀が目を見開く。

「いやいや……一時間くらい前だぜ?」
「ああ、そうなんだ。実は俺たち見ちゃってよ」
「何がだよ」
「佐竹、おい」

 野田が佐竹を注意するも、佐竹は鼻息が荒い。

「ああ、あれだろ? 京一さんが高橋涼介を連れてたってことだろ?」
「……は?」

 中原がヤレヤレと言うように言った思わぬ人の名前を聞いた三人は、はじめ空白が流れ、直後に弱々しい疑問の声を発した。

「だから! あの京一さんが敵対してた高橋涼介を連れてここに来てたってこと! 敵ながら京一さんのテクニックに惚れ込んだってことみたいだったけどな!」

 中原は。我が尊敬する皇帝が、群馬侵攻のメインの標的に置いた高橋涼介、しかもあろうことか皇帝を負かしたあの赤城の白い彗星が、バトルで味わった皇帝のドライビングに興味を持ち、懇願して助手席に乗っていろはに来たはいいが、あまりの皇帝のテクニックに陶酔し、しなだれかかっていた(ように見えた)というふうに解釈したのだった。あくまで中原視点であるが。それを滔々と説明するも。

「……高橋涼介って男だよな……」
「はあ? そりゃびっくりするほど綺麗な顔してたけど男だよ、あれは」

 遠いところからの声のような佐竹の発言を聞いた中原はまたヤレヤレという顔をするが、三人の呆けた顔にやっと気がついた。

「なんだよ? おまえら」

 そこで、ようやく古賀が口を開く。

「佐竹さんと野田さんが言ってた。さっき、下の俺たちが青姦ヤッてるすぐ近くで、京一さんもエボ停めて女とヤッてたって」
「……え?」
「だから、俺たちとヤッてる女たちが京一さんに気がついて邪魔したら悪いから、女たちが気がつかないよう頑張るぞってさ。遅くなった理由はそれなんだけどな」

 古賀の茫洋とした言葉。しかしきちんと内容の説明はできているので、妙な空気が流れる。

「ええ……京一さんも女と青姦? いやいやそんな流石に京一さん、そういうの嫌ってるし、何より連れがいるのに女拾ってとかそんなことあるわけねえじゃん。それか連れの高橋涼介をどっかに置いて女ととかありえんじゃん!」

 中原が顔の前で手をブンブン振りながら抗議する。

「いや、あのよ」
「高橋涼介ってどんな服着てた? まさかベージュのコート……」

 野田が言いかけた佐竹に被して早口に言った。
 それに中原は

「おう、そういう感じ。ベージュのトレンチコートぽかったぜ」
「野田と俺はしっかり見たんだよ……京一さんとヤッてる女もベージュのコート、それだったよ」
「ベージュのコート着た女に京一さんがフェラさせてた……よ」
「え?」

 そこで出てくる必然の解答。
 合計四人のEmperorのメンバーはしばし、空白の時間を共有したのちに。
 我が皇帝は赤城の白い彗星までコマした凄い! 流石俺たちの京一さん! という男と、京一さんはホモだったと茫然としながらもどこか頬を染めている男と、あの異様にエロティックな光景を思い出して、興味津々が過ぎて悶々となって京一さんと高橋涼介のホモセックスってどんなのだろっ! 凄いんじゃねーの!! パァンパァンパァンと叫びながら腰を前後に動かし狂喜する奴と、この話は絶対に口外するなと慌てふためいている奴四人がそれぞれのアクションをした。



「っう……へっくし」

 珍しく京一がくしゃみをした。もう宇都宮の京一の住まいに着こうかという頃合いで、幹線道路をエボVが走っている時だ。ズッと鼻をすする京一を見て、涼介が舘智幸のようだと笑う。そして笑ってるそばから

「へ、くしゅん!」

と、涼介までもが猫のようなくしゃみをした。顔をバッテンにしてムズムズする鼻をティッシュで抑える涼介を見て京一が笑う。

「誰か噂してやがるな……俺たちの」
「オレたちはリーダーだからな、噂されて当然」
「だが同時にってことは、……」
「なんだ? 北関東の走り屋の中でもトップのチームのリーダー二人だ。当然、一緒に名前が出てもおかしくない」

 二、三回、ティッシュで鼻を拭うと勢いビーームという音をさせて涼介が鼻をかんだ。

「……ふーむ……あれか、もしかしたら見られたかもな」

 京一は鼻を擦り、考え込む。夜の幹線道路は対向車も少なく、外灯だけが延々続く。

「何がだ?」

 涼介の疑問に、京一は赤になった信号を前にエボを停める。

「まあいい。おまえは俺にヤラれてるのを見られるが好きなんだろう?」
「……突然なんだ?」

 助手席をにやりと笑いながら京一は見やる。

「チームの奴らにおまえとのカーセックスを見られたかもしれん。多分な」
「……」
「おまえは嬉しいんじゃないのか?」
「……おまえはどうなんだ?」

 涼介の持つ被虐の性。そこを撫でるように責める京一は笑う。涼介はぐっと詰まると質問に質問で返す。そんな愚は、認めたようなものなのに。

「俺か。俺はな。けっこう独占欲が強い。しかし、……おまえを愉しませるためには最大限譲歩してもいいが」

 左の道路から右折してきたクルマのライトが京一の顔をぐるりと照らす。光が当たって灰褐色の虹彩が透けて、こちらを見つめている闇のような瞳孔が涼介の視界に入った。その目を見て、揺らいでいた黒い瞳は僅かに見開いた。

 蛇神ラーガか龍王か。
 龍の目に捕らえられている――――――その光景は、左目が最期に見た光景と同じだった。遠い記憶の扉が開くような、得も知れない感覚に身がぞくぞくとする。

バトルもそうだ。エボVの目が狙い定めて己であるFCを捕らえにかかる。
 
 自分は京一の何に惹かれ、いろはに中禅寺湖に向かったのだろう。あの周囲を圧倒し、睥睨する龍の――――――皇帝の目。それに何を求め、何が欲しかったのか。

 そうだ。昔も今の世も。龍の眼に捕らわれたくて、日光へ向かった……。
 京一はぐいっと涼介のほうに身を乗り出し、低く獰猛に言う。

「本心はおまえの善がる姿どころか、肌ひとつ。誰にも見せる気はない。俺の、日光の――――龍の皇帝のものだと言ったろう?」
「……」

 銀の鱗がまた。エボVの室内に舞った気がする。次いで、荒々しくも優しく施されたキスは。

「オレも他人に見られるより、おまえに絡め取られた方が……」

 好きだ、と。二人の掠れた声が重なり聞こえた。







[Pict]

京涼の日、お付き合いありがとうございました。 2024/03/09
SS Deep

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