In bed with mine
酷く苦手な時間がある。
正直、どんな顔をしていいのかわからない。
平静を装いながらも、いつも後悔している。
酒でも飲んで、意識しなけれはいいのだが。
しらふには、この逃げ出したくなるような感情が先立ってしまう。
――――……ベッドに横たわるべきか、一度着たパジャマはどうしようか……
勢いとか突発とは違う全くの平静な日常の、こう言う事に……とりとめのない、しかし考えればキリが無い事にうろたえる。
ああ――――うろたえてるんだ、俺は。
溜め息を吐いて、小さな木造のテーブルに置かれた水を飲み、喉を潤した。
濃紺のベッドに腰掛けて、心許無い気分になる。
――――……早く来い 京一……
硝子扉の向こうから僅かに聞こえる、流れる水音。
――――……いや まだ来なくていい……
うつむいて。
自分がこれからする行為に初めてでは無いのに、この時間はいつまでも慣れない。
――――……俺が先に入るのは、だから嫌なんだ。でも後から入ってもパジャマはどうしようかとか。
バスタオルだけ体に巻いてベッドで待つアイツに、如何にもお待たせなんてのも、もっと恥ずかしい……
――――……なんて時間だ。
頭をグルグルさせていると、ガタンと音がした。
ギクリと顔を上げると、硝子扉の向こうから大柄なアイツがゆっくりと歩いてくるのが見える。
――――……逃げたい……
耐えられなくてベッドに潜り込む。
以前はベッドにも近寄れずに、ソファの影に隠れた事もある。
その前はキッチンや小部屋に隠れた。
悉く京一に見つけられて、笑われてしまって。
すねる俺を抱き締めて、何度もキスして宥めてくれた。
パチンと明かりを消す音が響く、ハッとして背中を向けて見ないようにする。
ガチャリ―――……
ヒタヒタと歩く音が近付いて俺の心音が速く打つのが、聞こえてしまいそうだ。
「――――……涼介……」
低く流れる優しい声が、俺の耳から胸に染みてギシリとベッドが重みで軋んで髪を撫でられた。
「眠ったのか……?」
――――……違う、バッチリ起きている。
更なる重みにベッドの軋みに息を飲んだ、密かに。
「――――……」
背中から抱き締められて耳許にキスをされる。
大きな掌は宥めるように肩から腕、そして手を軽く握る。背中が暖かくて、堅くなっていた体から力が抜けてきた。
「……気持ちいいか……」
ああ――――京一にはわかるんだな。
俺の事を知り尽して、しゃくに障るような。でも嬉しいような……複雑というよりはもっと甘く、酷く切なくなる。
「――――……気持ちいい……」
思わず出た台詞にも、動揺しない自身に少し驚いた。そして体を捩って京一を見た。
その慈しむような双眼に俺の中が甘く疼く――――……
子供のように首にしがみついた。
俺を受け止め、なだめる掌。裸の広い肩、 逞しい腕。
とても切なくなって、京一の肩に軽く噛みついた。
「……こら」
顎を掴まれ、唇を寄せられる。僅かに抵抗する手も意味が無くなってしまう。
――――……早くキスが欲しかった
そう囁いた。
纏うものは互いに何も無い。
重ねられた肌には僅かに汗が浮かび、京一の唇が首筋をなぶり、先ほど散々いじられた胸をまた愛撫される。
「いや……だ……」
プツリと立ち上がり、敏感に熟れたそれを京一の指が器用に触れる。
首筋にあった唇は下りて、片側のそれに淫らな口づけを与え出した。
「んう……ああ……アッ……」
ぴちぴちと舌で弾かれて、下半身に痺れが墜ちる。
元々自分のこんな部分に、快感があるとかそんな事は考えた事も無かったのに。
京一に抱かれてから。
自分の体がこんなにも反応する、隠しようの無い事実に恥じる。
「あ――――……ああ……はッ……」
声は甘く洩れて京一の髪を掴み、知らずに胸を押し付けて、もっとして欲しいとせがむ。
女じゃあるまいし、こんなに恥ずかしいのに……
「いや……だ……アッ……女じゃ……ない……ッ……ああ……」
京一の頭を抱えるようにしながら、何と言う矛盾した台詞だと。
我ながら混乱する思考と体に呆れながら。
「ああ―――……わかってる……」
もう片側に移動して、胸の皮膚の薄い勃ち上がった部分を、唇で包み舌で叩くようにしながら。
さっきそうやって唇で愛撫した部分は唾液をぬめらせて、指の腹で擦り、摘む。
両側から与えられる、むず痒いような痺れに気付かぬ内に勃ち上がり滴を垂らす、決して女には存在しない部分を京一の腹に知らぬ間に擦りつけていてしまっていた。
腰の奥、体内に疼く、京一によって初めて暴かれたどうしようも無い部分さえ。
ズクンズクンと熱を持ってくる、あさましい体の行き場の無さに。両の太股を開き気味に、京一の腰を引き入れんばかりに揺らしてしまう。
こんなにさせる京一に、悔しさと恥ずかしさに涙さえ浮かんで。
もっと欲しいと口にしてしまう 。
甘く混沌とした世界へと陥落してしまう。
京一の左手が、安心させるように何度も体幹側面を撫で擦る。
まるで上質な羽毛のように。
その手がゆっくりと腰骨を辿り、揺れる俺の臀部を掴んだ。
狭間を辿る指は、京一を受け入れる場所の辺りを酷く意識させるように動く。
―――――――ここだと。
教え込まれて、突きつけられて。羞恥のあまりに瞼をきつく閉じて眦から流れる滴。
その場所には、いつのまにか、京一の熱い指先で温まったジェルを塗り付けられている。
人差し指の、くの字に曲げた間接の背が、表面を弛めるように弧を描いて蠢いていく。
「んッ……んん……」
唇を噛む。恥かしさにまみれる。ズグリ……と指が挿れられる。
俺の中を撓ませるように……
「はッ――――……あああ……」
ゆっくりと奥に侵入しながら、螺旋に内壁を拡げられる。
「ああ――――……ア」
グチュリと濡れた音を立てて指が回されて、二本目が添えられる。
俺は身をくねらせながら、体内を収縮させて、奥へ引き込む。
両の足は恥ずかしげも無く開かれている。
変わらず胸に粟立つ乳首も、厚みのある舌が容赦無く舐め回している。
濡れて雫を滴らす、弾けそうな性器を京一の体に擦りつけてしまう。
深々と指をあんな所に入れられて。
悦ぶ自分に。
体内を脈動させて京一の指にもっと触れさせるように、競り上がり、此所をもっと擦ってくれと。
体が切なく主張する。
「……悦いか――――……」
熱い息が胸にかかる。
ああ――――……京一も熱くなっている
京一に欲される。
その事実に、俺の中の何かがじわりと動きだして、頷き、足を抱え上げた。
膝裏を自分で掴み寄せる。持ち上がった腰に、京一の熱い部分を触れさせるようにした。
―――――……欲しいと。
胸から顔を上げた京一の目が、細められながらも燃えるように欲情に揺らめくのがわかる。
京一の逞しい雄を俺の中に。
自分ですら知らない体内を、蕩けて蒸発するまで掻き回して欲しい。
「――――……お前は……」
京一の喉奥から深い溜息が吐かれ、胸にかかった。そして、侵入していた指がツプリと抜け出して、太股を更に抑え込まれた。
息が詰まりそうになった途端に触れる熱い息、舌、唇。
「あああ……ッ――――……いやだ……ああ……」
綻び、ひくつく粘膜を荒い獣の息と共に、滅茶苦茶に舐め回されている。
舌が潜り込み また引き出されての、何度も繰り返されるその行為に。
悲鳴と哀願と。聞き入れられる訳もない拒否と。
いや――――呼吸の合間に、体に。もっとして欲しいと 浅ましく滲ませる。
「……涼介……」
しゃくり上げるように息が乱れて、涙が零れる。
「……たくさん達かしてやるからな……」
指がグチュリとねじ込まれて、性器を銜えこまれた。
指はあの場所を的確にえぐり、性器は唇に扱かれて、複雑に絡み付かせられた舌に裏の筋が張る部分や、張りつめた先端部分を翻弄される。
「ああッ――――――いい…………あっあっあ……ッ達く……ッ……達く……ゥ……」
連動する快楽に甘い悲鳴を上げて、寄せられていた眉根から力がスッと抜けて、一際大きな波が来て。
弾けた―――――……
そうなると俺は、自分を止められなくなるらしい。
顰められた眉が解ける時 俺がトンでしまうサインらしいと、京一に初めて聞いた時は信じられない醜態に顔から火が出そうだった。
でも京一は嬉しそうで、俺を蕩かすのが何より好きだと言った。
京一の首にしがみつく。
力の入らない腕で震えながら、キスを求めて舌を差し出す。
絡み合わせた舌に自分の味がしても、戸惑いなんか欠片もなく、もっとと。
いや――――それ以上に京一のモノに手を伸ばし
五指を絡み付かせて、扱き上げて。
この―――――自身の求めて止まない男が俺自身に欲情して滾る証を。
顔を埋めて舐め回し、必死に銜えこもうとする。
張り出した部分がかなり無理なのだが、唇を大きく開けて、舌を伸ばして下から上へ、小刻みに舌を閃かせて舐めあげながら。
下から京一を見上げる。
舌をいやらしく蠢かせて、見てくれと。こんなに欲しがる俺を見て欲しいと。
闇に光る獣の目を細めた京一が、指を俺の唇に伸ばす。
俺の好きな無骨な指を、猛る性器と一緒に舐め回す。
鼻からすすり泣くような、甘い息をつきながら。
「涼介――――下から突き上げてやる……上に乗れ……」
興奮を抑えて掠れた京一の声に導かれて。俺の中を可愛がってくれと、艶然と微笑む。
この熱いお前の雄の証し。熱く滾る部分で……と、キスを落として。
あられもなく京一の腰に跨り、手で緩やかに扱きながら支え、取り憑かれたような霞んだ瞳で後ろに擦り付け、唇を開けて悶える。
京一が俺の頬を撫で、熱い息を洩らす。
俺は舌で唇を舐めて、淫らな言葉を愛して止まない自身の男に言った。
「俺の物だ……全部……この×××も……」
京一の眉が顰められる。深く、息を吐きながら、ゆっくりと腰を落とす。
「ああ……俺も……全部……この中も……お前の……あああ、あ……は……」
仰け反り、喉を晒す俺の腰をがっしりと掴み、本能に火を点けられ、獰猛な低い呻きを上げた京一が下から支えて腰を動かす。
「そうだ――――――俺はお前の物だ……美味いか……涼介……」
体を引き起こした京一に抱えられながら、
「蕩けそうになる……美味し、い……京一の……ああ……」
ヂュグヂュグと、長いストロークで下から打ち込まれる杭に、震えながら身悶えさせられる。
あんな場所なのに、欲しくて堪らなかった甘いご馳走を粘膜が大きく飲み込み、肉壁が悦んで味わっているのがわかる。
熱くて硬く、太くて長い、脈打ち筋張った俺の男の…………。
「意地が……悪い――――こんなに……欲し……かった……のに」
泣きながらすがりつく、切なさと悦びに涙が溢れて止まらない。
「……悪かった……可愛くて堪らない……涼介―――ッ」
ついばむように優しいキスを受ける。挿し貫かれながら互いに祈るように。
「んッう――――……ああッ……はあッ……」
欲しかったモノに熱く熟れた粘膜が、悲鳴を上げて悦ぶのがわかる。
「はッ――――……凄い、ぜ……涼介ッ……熱くて締まる……」
逞しい体の上で跳ねる自分の、揺らめく髪と散る涙。
京一が腰をずれないようにしっかりと掴んで、尻を揉みしだきながら下から突き上げ、濡れた男根を出し入れする。
まるでそこを――――――今、存分に味わい犯していると。
芯から意識させるようで、ゾクゾクと腰から痺れが昇ってくる。
京一の愛撫とセックスはいやらしくて淫らで、優しくて。
それが堪らなく気持ちいい。
「ダメ……だッああ……また達く……いくッ……」
擦られて、電流が流れるように感じる前立線辺りを、張り出した京一の肉塊が押し入っては、引っかくように前後していく。
歓喜に喘ぎ、とても普段は口にできないような、卑猥なことを繰り返し呟いてしまう。
自分で性器を淫らに弄り扱くさま、精を散らすさまを京一の獣じみた視線に晒して、またとてつもなく興奮する。
引き締まり、俺を貫くために蠢く腹筋に精が迸る、この愉悦。
ガクガクと揺れて痙攣して、京一は倒れこんだ俺の体を抱き締め、耳元で唸った。
「――――――ッ……煽りやがって…………お前は……」
そして、京一の熱い筋張りを嵌め込んだ震える臀部をしっかりと掴まれ、腰を少し上げられて下から狂ったように突き上げられた。
「ひ―――――ああああ――――ッ」
脳天にまで快楽の炎が噴き上がる。
声にもならない嬌声が止まらなくてどうしようもない。
尻を叩きながら、京一の下腹部が早いリズムで抽送する。
抵抗なく、ぬめってスムースに出入りする熱い肉の棒の下、睾丸がスパンキングするように打ち付けられて悦びに震える。
淫らに熟れた粘膜を立て続けに抉られて、達かされて―――――――京一の精液を俺にたくさん注ぎ込んで欲しい。
「はあッ――――あッ……犯して……もっと……俺を犯して……京一……京一……」
京一の耳にとんでもない浅ましい言葉を、あられもなく吹き込んで、互いに死ぬほど興奮が高まっていく。
普段、あれほど理性的でストイックな京一が雄そのものになるのが、とてつもなく好きだ。
「ああ――――……犯ってやる……涼介―――ッ……」
言葉は出ずに揺らされ、下から突き上げられるリズムは、浅く深く堪らない間隔だった。
時折、抉るようにグラインドさせては、内粘膜を掻き回し、味わい、喰い尽くすように、自身の腰は同じように律動して揺れる。
じらすように浅く小刻みに出し入れされたり、根元まで挿れられて、なおも深く欲しくて。
激しい腰の動きに、逞しすぎる男の肉塊に。辱められているように尻を叩かれて。
触れもしていないのに、揺れる性器からとろとろと精液が漏れ出す。
「ああ……あ……はあ―――――や……あ―――――……」
呂律の回らない悦びの声。体を入れ換えられて、組敷かれる。
「んんふう――――……ふ……う……きょ……ち……京……一……もっと……もっと……」
勢い、埋められていた肉棒が引き出されてポッカリと開いた空洞を、京一の濡れた熱い舌が掻き回す。
「……ふあああ……あ……あ……は……」
腰だけを高く上げさせられる、恥ずかしくて堪らない格好なのに。
俺は顔にまで寄せられた自分の膝頭を抑える京一の手の親指を、呆けたように笑みを浮かべながら舌を出して舐め回した。
「……俺にこうされて嬉しそうだな涼介。……ん……? ほら、こんなに悦んでるぜ」
局部に低く甘く。
囁かれて、応えるようにヒクンヒクンと粘膜が疼き出す。そしてもっと欲しいと、抉るように嬲る舌を引き込もうと勝手に蠢く。
「……今×××を突っ込んでやる……」
その声を合図に宛がわれた灼熱の強張り。嬉しさに甘えるような声を出してしまう。
激しく唇を貧ぼられながら、痺れる甘さに溶けた粘膜を激しく穿たれる。
両足を肩に抱え上げられて、上から叩き込まれる限界を超えた快楽。
「あああ―――――ッ……ああ……やあああ……ッ……好き……だ……大好き……ああああ……」
痙攣し、次々に精を洩らしながら、ぬめり、激しく打ち込まれる熱塊に髄まで掻き回されていく。
達きっぱなしで白くなっていく意識に聞こえた。
――――……お前……だけだ…………愛してる 俺の……涼介……
ドクリと撃ち放たれて体内に染み入る熱さと同時に、苦しげな呻きに含まれる、限りない愛情。
足をより一層、京一の腰に絡みつかせて。
痙攣する粘膜の奥深く、一際大きく張詰めて俺に刻み込むように何度も脈動する、熱い京一の男根に射精されて……
なんでこんなになるのかわからない。どうしてこんなに幸せなのかわからない。
ただ、嬉しさに涙が溢れて――――意識が霞んだ。
ベッドに横たわる俺の
髪をいつまでも撫でて
時折 落とされる優しいキス
甘い囁き
自分で呆れて嫌になるくらい、こんなに乱れた俺でも
どこまでも受けとめて、包む京一の
全てをこんなに
京一……――――京一……
―――――お前の腕の中、全てをさらけ出して真っ白に輝ける、彗星は。
お前のものだ……
永遠にお前のものだ……
Pict
2010/03/13 Love*end 京一と涼介はどこまでも二人で一つ。京涼の日&サイト3周年企画おつきあいありがとうございました。