男達の裸バトル 2 [1] | ナノ
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男達の裸バトル 2 [1]

 ざわざわと客席が収まらない中、喧騒は一際、ある場所に集中していた。

「おいッ!早く出ろッ!赤城のッ!」

「う……うるせッ……ああッ!啓介さーんッ!」

 何故かトイレ、しかも個室が大盛況である。居並ぶ男達は目が据わり、これまた何故か前屈みである。

「……京一さん、たまんねぇ……」

「ああ……あの体でガンガン掘られてぇな……」

「……大輝も中々やるな……酒井がスマイルしっぱなしだぜ……」

「メガネッ子は俺がやっちまいたかったぜ」

 暑苦しいヒソヒソ話しは決して可憐では無く、野太い。
裸バトルは走り屋達の男達の勲章と言うよりも、男達の妄想へとシフトが変わっていった。


 各チームに割り当てられた楽屋内では、各々が綿密にミーティングをしていた。

「……清次、お前はあんまり馬鹿っぷりは出すな」

「う……わかったよ、京一」

「小柏、お前はまあまあだな、もっと弾けていい」

「……カイって呼んで下さいよ、須藤さん」

 清次と京一が二人揃ってカイを見つめた。

「あ、俺も京一さんって呼んでいいですか?」

 潤んだ黒目がちの子犬のような瞳、赤味の強い唇はふっくらと。妖しく京一に微笑むカイに清次は心で呟いた。

――――……やっぱ小柏ってホモ臭ぇ……

 京一はそんな清次の危惧を知ってか知らずか、ニヤリと笑ってカイの耳許に囁いた。

「構わないがな、お前の働き次第だ、カイ」

「はい、任せて下さい、京一……さん」

 間近に京一の灰褐色の目を受けて、尚且つカイの鼻孔に流れ込む男っぽい京一の香り。
 蕩けそうな表情で京一を見つめるカイの返事は溜め息の中に甘い音が混ざっていた。


「……それでだな啓介、こら変な所を触るんじゃない。」

 赤城チーム楽屋扉には、乱暴な汚い字で殴り書きされた邪魔するなの紙が貼り付けられて、扉の前には胃の辺りを抑える広報担当者が一人。

「アニキに勝てるヤツなんていねぇよ……」

 さっきからまとわりついてはキスを繰り返す弟に、兄は仕方無いなと苦笑を洩らす。

「アニキ、客席ばっかり見ちゃヤだよ」

上目使いにそのアーモンドのようなキラキラした目を向ける。
チラリと出した舌が涼介の胸を舐めあげた。

「あッ、こら啓介……」

のけぞった涼介の顎のラインが綺麗な線を描いてソファの陰に消えた。



「…………ジーンズは遵守だッ!」

 仁王立ちの秋山延彦は従兄弟である秋山渉にジーンズを差し出す。
 ソファに偉そうに腰かける渉は未だに全裸だ。

「あ〜ッ、遵守って何だよ? ノブ〜。」

 お気楽馬鹿な抜けた台詞に延彦の肩がガックリと下がる。

「……馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、兎に角これを穿けぇッ!」

 延彦の剣幕も意に介さず、渉はニヤニヤと笑いながら言った。

「穿かせて?」



 渉の策略にまんまと嵌った延彦の口には渉自身が嵌っている。

 両頬を渉の大きな掌で内側に押し付けるようにされて、ぐいぐいと喉奥まで何度もスライドされる延彦の荒い呼吸は、水音と共に鼻から抜けて甘えた音に聞こえる。
 腰を動かし激しく口腔内を味わい尽すように犯して勢い、延彦の頭を後ろに下げた。
 まだ口を大きく開けて息を乱した延彦に向かって、何度か扱き上げると飛沫を喉に叩き付けた。
 朦朧としながらも反射的に喉を鳴らして飲み干し、舌をなまめかしく動かして、唾液混じりの精を飲み込む延彦を満足そうに笑う渉が見つめた。



「……トモさん、それは無理っすよ……」

 ソファに仰向けるプロレーサー舘智幸の上に覆い被さる形の二宮大輝は、さっきから唇に耳に与えられる智幸の愛撫に熱い吐息を洩らす。

 レーシングスーツの前をはだけた舘智幸、シャツははおるだけでジーンズはずらされている二宮大輝は、互いの下肢を剥き出して、溢れるぬめりと共に小刻なリズムで擦り合わせていた。

「……大輝、お前の欲しがる顔が悦いぜ……」

 ゆらゆらと淫靡に腰を動めかして、虚ろな甘い表情の大輝は智幸と舌を絡み合わせる。
 一定のリズムは段々と速く熱を帯て、荒い呼吸も伸ばして叩きあうような舌も、あえぎ声さえシンクロしていく。

「…………はあッ……ああットモさん―――ッ! イイです……ッ!」

 智幸の両手が大輝の双丘を揉みしだき、拓いて奥へと指を潜らせる。
 少しだけ開けられた扉の向こうでは、二人の痴態を見つめて笑う酒井が立っていた。



 威風堂々と歩く須藤京一に、廊下に居た人々が慌てて道を開ける。
 無表情に通り過ぎるキツイ目、今はTシャツに包まれた逞しい体に見惚れて溜め息を吐く。
 その長身が赤城チーム楽屋前に立っていた広報担当者に声をかけた。

「涼介、ちょっと」

 赤城チームの楽屋扉を細く開けて、広報担当者は遠慮がちに中に声をかけた。
 のしかかる体勢の弟をいさめて、涼介は部屋から出てきた。
 部屋の中から啓介のブーイングが聞こえる。
 少し離れた場所にいる京一と対面した涼介は目配せをする。
 応じた京一が顎をしゃくり、涼介より先に歩き出した。



 楽屋倉庫内の薄暗い片隅とは言え、今日の様子では誰が来るかわからない場所で、須藤京一は高橋涼介のシャツを纏う細い体に逞しい腕を絡めていた。
 涼介も気持ち良さげに京一の厚い胸に掌を添わせ、首筋に唇を寄せる。

 甘く―――かすれた声音で京一に囁く。

 苦笑する京一は、涼介の髪や背中をゆっくりと撫でている。

「お前は……、そんな事言うな……」

 クスリと笑って京一の鼻に涼介も鼻頭を擦りつける。

「だって、そのためにホテルの部屋を取ったのだろう? 京一……」

 涼介の瞼に軽くキスしながら京一は言った。

「久しぶりだからな、あんなお前見ると止まんねぇ……」

 涼介は意地悪く笑うと京一の唇をペロリと舐めあげた。

「おい、あんまり弟に悪さされるな」

 涼介の首筋のほんのりと淡い痕に、京一の唇が近付き、軽く噛みついた。

「―――ッ……ア……京一……」

 軽く甘噛みしながら舌でも刺激する。涼介の体がすがるようによじれていく。

「心配される事までされて……ない……」

 首筋に埋められた京一の頭を涼介の腕が掻き抱く。軽く吸いあげながら、京一は低く言った。

「……本当だろうな……」

 耐えきれないように首を反らせた涼介に、京一の肉厚の舌がゆっくりと舐めあげる。

「こんなに……お前が欲しいのに……」

 涼介の腰が京一に押し付けられる。
 京一はクスリと笑って、涼介の唇を長い指で開かせた。
 ペロリと下唇を舐めた京一が涼介のあえぐ唇に重ねようとした時に、ジーンズのポケットに突っ込んでいた携帯から、エンペラーのテーマが響き渡った。


 無粋だ何だとふてくされる涼介をなだめて京一は楽屋に足早く戻った。
 機嫌を取り戻すためにそれはそれは濃厚なキスを与えて、腰砕けにさせてしまったが。
 久々の逢瀬となる今夜、続きをと言う言葉を呪文に涼介を楽屋へ帰させた。

 京一が戻るといろはチームの楽屋には珍しい人間がいた。

「すいません、須藤さん」

 ペコリと頭を下げる色白のメガネッ子は、埼玉従兄弟チームの秋山延彦であった。
 顔は良くみれば、憤然としながらも泣きはらしたようである。
 怪訝に用を訪ねる京一に延彦は意を決したように腰を折った。

「お願いがありますッ!」



 涼介が赤城チーム割り当ての楽屋口に戻ると、青い顔をした広報担当者史浩は慌てて涼介を阻止した。
 訝かしんだ涼介が厳しい顔で史浩を制し、扉を開けて固まった。

 激しく肉を叩き付ける音、上がる矯声、弟、啓介をソファに這わせて腰を掴み、とある行為に真っ最中なのは――――秋山渉であった。

「アッあッあ―――ッ……秋山ァッ……イイッ……イクゥッ―――ッ!」

 啓介の明らかに悦びを含んだ一際高い声音、涼介は一見すると無表情に見つめているようでも、美しい両目の瞳孔は開いていた。


2007,06,28 下に続く↓




―――お前ら躍動する男達の肉体を見たいかあああーッ!
 ざわめく客席を切り裂くようにMCが轟いた。
 呼応するように客達は絶叫する。地鳴りをも引き起こす、野太い声は何度も言うが男性比率が異常に高い。

――――紹介タイムの後はお待ちかねッー! ダンスタイムだあああッー!
 まずはひれ伏せ! 軟弱な愚民共ッ! 現代のスパルタァッ! 肉体美のいろはチームだあああッ!

 一斉に巻きおこる絶叫、悲鳴。同時に大音響で流れるは、ウイル・スミス「SWITCH」。

 舞台が照らされ、拍手と共に雄の本能を呼び醒ますバスドラの一定リズム。
 不敵に佇む白いTシャツを纏う三人の内両端の男二人は、にやりと笑うと曲のブレイクに合わせて己がTシャツの首元を握り、引き裂いた。

 清次の晒された逞しい体、カイの若く均整の取れた体。二人は中央で腕組して睨みを訊かす京一に近付いた。
 二人を包むように長く逞しい腕を、広げた京一の張りつめた胸にカイが熱い溜め息をついて掌を這わす。

 横を向いた京一がカイの耳許に意味深に何事か囁く、甘い目でまるでキスされたように受け取るカイがホモ臭い。

 清次は京一の背と脇腹に掌を這わす。熱い目で京一の逞しい筋肉一つ一つを確かめるようにする。

 清次に目を向けた京一は、満足気に酷薄な笑みを向けた。
 ニヤリと受けた清次が京一のジーンズの前ボタンから上に、ゆっくりと―――中指の腹を上に這わせた。
 客席がヒートアップどころか悶死寸前に京一の顎が合図して、白いTシャツが両側から引き裂かれ。

 ゆらりと曲に乗りながら現れたのはギリシャスパルタ兵のような削ぎ落とされた体―――


テーマ曲を是非お聴き下さい↓ウィル・スミス「SWITCH」



―――ヒイッー京一さああんッ! 滅茶苦茶にしてくれぇぇええッ!

―――須藤さああんッ! 俺のケツ●●●を掻き回してくれえええッー!

 男臭いウイル・スミスの曲に乗りながら、清次やカイは楽しげに踊りまくる。
 曲に合わせてセクシーなあえぎにも聴こえるコーラスを口にしながら、飛び散る汗、躍動する筋肉、うごめく腹筋は――――美し過ぎた。

 京一は理想的な体をリズムに合わせながらも大袈裟に踊らず、あくまで渋い。しかしながら緩やかに雄のセックスを連想させるリズムに動く腹筋、背筋、軽くシェイクされる腰はアピール抜群だ。

――ああ、俺達は今京一さんにFUCKされてる…………

 客席は一体となり、熱く暑くなっていく。

 曲中のトーキング、「SWITCH」と言う低い声に共に合わせて、片眉を上げて客席を凶悪に一瞥する。
 更に「HIT it」と蔑ずむように唇がニヤリと歪む。

 まるで―――悦いんだろう? 此所が……こうされたいんだろう? ……と囁かれるようで。

―――俺のSWITCHもHITされっぱなしです……

 崩れ落ちる何人かの男達は幸せそうに笑っていた。

――――素晴らしいッー! 流石いろはチームだああああッー! 客席をやっちまいやがったあああッー!

 裏のカーテンから覗く赤城チームの兄、高橋涼介は上気した赤い顔で舞台の須藤京一を見つめる。

「…………ふッ、今夜京一は俺のSWITCHをHITするんだ、しかも一ヶ月振りのFUCKなんだ……楽しみだな、京一……ふふ」

 トロリと虚ろに笑みを浮かべ、ブツブツ呟く涼介を弟啓介が怪訝に見遣る。
 啓介も先ほどの秋山渉との熱いFUCKの余韻で顔が赤い。

二人は完全にエロスモードにスイッチが入っていた。



―――次は色香漂う、奇跡の兄弟ッ! 妖艶なる美しきカリスマに膝まずけッ! 赤城チームだああーッ!

おおおと言う野太い声援に混じる黄色い喚声。

―――私の涼介さまあああーッ!

―――啓介くうううんッ! お持ち帰りしたああああいッ! 

 美しく幻想的なIVYの「Worry about you」が流れてきて、薄暗い舞台はスモークが漂う。
 深い森を連想させる厳かとも言える異世界はまるで映画のようだ。

 スルスルと舞台の中央に現れたの一本のポール。ポールの両脇にゆらりと佇む、しなやかな長身。
 薄いシャツを揺らめかして、黒髪の美神がポールに背を預けて客席に体を向けた。


是非一緒にお聴き下さい↓
IVY
「WORRY ABOUT YOU」



 後ろから金茶の髪の美神が、ポールごとその長い腕で抱き締めるように絡める。
 伸ばされ、遊ばせるように動く手に黒髪の美神――涼介は、息を飲み、顎を反らして身をよじった。
シャツがスルリと下ろされて、白くしなやかな肢体がなまめかしく露にされる。

 白い胸を僅かに上下させ、物憂げに――――明らかに誘うように客席を見つめる黒い濡れた瞳は。
 客席どころかMC、いろはチームまでもが息を飲んだ。

「京一ッ! 大丈夫かッ!」

 いろはの皇帝須藤京一は、膝から崩れ落ちながら鼻血を吹いた。

―――クッ、涼介、テメェ、今夜覚えてやがれッ!

 ポール両脇に緩やかに移動した赤城の美しい兄弟は、妖しくポールを掌でゆっくりと撫で上げたり、華奢な腰にポールを押し付け、スラリと長い太股に挟み白い綺麗なラインの喉を晒す。

 更に顔を傾け互いに唇を軽く開けてポールをくわえようとしたり、舌で舐めあげようとする仕草を見せつけた。

「京一ッ! しっかりしろッ!」

 いろはの皇帝須藤京一は立ち上がる事ができなかった―――とある場所が立ち上がってしまって。

―――クッ、テメェ涼介、それはまだ俺にヤッてねぇだろうがッー!

 会場全体に満宴するジットリと熱い空気は、明らかに欲情――――ケンタ含めそれ以外の連中は魔法にかけられたように、呆気に取られながら近くにいる互いの体をまさぐり合う。

―――ヤバイぞおおおッー! これ以上、赤城チームを見ていたら乱交が始まっちまうぞおおー、流石の赤城チームだあああー!

 我に帰った客席では互いに恥ずかしがり、突き飛ばしあい、気まずい。

 しかし、参加を辞退した妙義チームの二人と土坂チームの二人は熱く見つめあっていた。



――――次は埼玉従兄弟チームだがジーンズは……良かったああー! 穿いてたぞおおおッー!

 曲は何故か紹介タイムのご陽気ウルフルズとは違い、a-haの「Cry Wolf」に変わっていたが、やはり狼繋がりである。

 舞台には秋山延彦を肩に担いだ半裸の秋山渉が悠然と歩いてきた。
 延彦は哀れにも猿轡にロープで縛られ、舞台上に置かれた。

 固唾を飲んで成り行きを見つめる客席に響きわたる「Cry Wolf」の雄叫び。
 渉はニヤリと笑うと叫んだ。

「なああにが、ダンスだああッー! 男のダンスはなああッー! ピー(ハウリング)だぜえええッー!」

 言うやいなやジーンズ前をはだけて、ピー(ハウリング)を掴み出すと客席がウオオオと湧いた。
 延彦は泣いて暴れるが、口には猿轡、体にはロープ。犬歯剥き出しの渉がギラリと笑う。

「アドレナリンもカ●パーもどっぱどっぱだぜえええッー!」

 客席も一丸となり、ピー(ハウリング)を掴み出し空に吠える。


↓是非お聞きください
a-ha「CRY WOLF」


 響き木霊する何とも下品な「どっぱどっぱだぜえええッー!」。

「へへッ、じゃあ延彦、踊って貰うぜ〜」

 のしかかり、延彦のジーンズをはだけてずらす。暴れる足を器用に抑え込んで、白い足を肩に抱えた。

 客席の男達のある種の夢が――――色白、ツンデレ、メガネッ子が、今まさに狼に食われようとしている。

 狼のたぎり立つ凶器が、可愛いメガネうさぎちゃんの足の間に―――

「―――ちょっと待ったあああッー!」

 野太い声が響き渡る。
 虚を突かれた渉の周りに駆け込んできたのは、上半身裸なので筋骨隆々としたいろはチームであった。
 何だ何だと騒ぐ客席、不機嫌に怪訝に向き直る渉の前に、腕組した京一が嫌そうだが静かに言った。

「……どうだ? 秋山、俺らで勃つか?」

 犬歯を剥き出し、反り返る凶器をも剥き出し、渉の欲情に駆られた目が強烈に光りを放っていた、が

「ガルル………」

「ガル……」

「ル……」

「…………」

「……クゥ〜ン」

 渉は狼から子犬になった。たぎる股間さえ狼から子犬へ。

「クゥ〜ン、ノブゥ〜」

 尻尾フリフリ、カイによって解放された延彦にスンスンと甘える。
 頭をグリグリ延彦の胸に擦りつけて甘える。

「須藤さん、ありがとうございました」

 甘えじゃれる子犬渉を抱えて延彦が礼を言う。

「……まあ、俺らみたいなのが萎えで良かった」

 延彦に仕方が無いなと言う風に笑った時に、京一に取っては聞き覚えの有りすぎる声が轟いた。



2007.07.01 to be continued

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