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▼ さようなら

一馬、貴方の事が分からなくなりました。
私は……貴方の何だったんでしょうか。



「…」


ヘリから見下ろして見たモノは、目を疑うものだった
狭山とキスをかわす桐生の姿
ヘリの中から見えた深い口づけは終わる事を知らず続いていた


「なまえ、なまえ…」


目を見開き目に涙を溜めている姿を見て、慌てた様な伊達さんの声が遠くで聞こえた気がした。
あれから事件は解決し日常生活へと戻っていく
狭山は海外へと旅立つ前に桐生、遥と共にお墓参りに訪れる。
墓参りを済ませると彼女は早々に去っていき、入れ替わるように二人へと近づくと微かに笑みを浮かべた


「…行っちゃったんだね」

「…なまえお姉ちゃん…」


遥が先に気づいてそちらを見ると桐生も視線を向けて口を開いた


「…なまえ」

「久しぶりだね…一馬」


桐生へと視線を移すと目と目があう
その瞳は充血しておりほんのりと目の下に隈ができていて少し痩せたような印象を持った
その姿に桐生は微かに目を見開くと目を細める


「今日はね…一馬に話があってきたの」

「…」


その言葉に嫌な警報が頭の中で響き渡る。
その先を言わせてはいけない、聞いてはいけない気がして桐生はゆっくりと手を伸ばした


「…私地元に帰るね。だから…別れよう、一馬」

「っ…」


俯きながらも話す言葉を聞いて動けなくなったように動きを止める手。
頭をガツンと殴られたような衝撃を受けて身動き1つ出来ない


「…貴方の、事が…分からなくなって…。
…あの、貴方と狭山さんが口付けを見て以来」

「っ…」

「…貴方が何を考えてるのか、私をどう見ているのか。
私には、分からなくなった…ごめんなさい」

「なまえ…」


触れようとした手は身を引かれた事により届く事は無かった
今にも泣きそうな顔上げて最後だからと無理に笑みを浮かべる姿に眉を潜めて辛そうな表情を浮かべる


「…私の事は、心配しないで。
…幸せになってね…桐生さん」




さようなら。
(なまえっ…!)
最後に聞いた貴方の声は悲痛な声でした。
さようなら、愛しい人。
貴方を、心から愛してました。

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