女子高生調伏師の日常


と立さくら上水小学校
3年1くみ 神宮梨子
わたしのしょうらいのゆめは、おじいちゃんやあきらお姉ちゃんやマルコみたいな、すごいちょうぶくしになることです。
わたしのおうちには、すごいちょうぶくしがたくさんいます。
みんなまい日、あやかしと戦っています。
すごいです。
わたしもあんな風に、強いちょうぶくしになりたいです。



小学校の授業参観の日だった。
将来の夢というテーマが出されて、幼い私は迷うことなくあの作文を書いた。
将来の夢っていうか、当時の私はうちの家業以外の世界を知らなかったし。
調伏師以外になる人生なんて考えたこともなかったのだ。

あの作文を読んだ時の先生の顔はもう、見てられないくらいに青ざめて、参観に来ていたお母さんたちに「すごいでしょう?神宮さん!お話を作るのが得意なんです。有望な小説家の卵なんですよ…!」
と、私が少し「一般」とはズレていることを必死で誤魔化していた。

あの時はどうして先生があんなにも必死だったのか解らなかったけど、今なら解る。
うちの家は、「一般」的な人からは受け入れられないのだと。





女子高生調伏師の日常






「ただいまー」

世田谷区のイメージにそぐわない、荘厳な雰囲気を醸し出す武家屋敷。
確か、江戸時代には既にここに建っていたんだという噂を聞いたこともある。
これが私の家。
基本的に私の家族が居ることは少なく、それ以外の誰かが居ることが多い。
もちろん、「それ以外の誰か」だって家族に負けず劣らず私の大切な人なんだけどね。



「あら、お帰りなさい梨子」

「ただいまー玲さん」

緩慢な動作で靴を脱ぎ、もう夕方だというのに大きな欠伸をした私に、玲さんがにこりと綺麗に笑いかける。
今日もいつもと変わらず大変麗しい。
しかし、忘れてはいけない。
この美人はとんでもなく人使いが荒いことを。



「そうそう、さっきその辺りで浮遊霊を見かけたの。見かけたら貴女、祓っておいて。」

「えー!玲さんが見つけたときに祓っておけば良かったじゃんっ!」

「仕方ないでしょう?その時は札を持っていなかったの」

「……玲さんなら札なんて無くてもぱぱっと術で祓えるくせに」

「それにしても、浮遊霊が入ってくるなんて。きっと屋敷の結界が綻びてきたのね。後で渋沢くんや功刀くんたちに張り直してもらわなくちゃ」

「人の話聞こうよ!」


と、文句を言いつつも私は鞄から札を取り出した。
玲さんが一度言ったことは決して覆らないからだ。
どうも私は玲さんには頭が上がらない。
大人しく札を取り出した私を見て、玲さんは「よろしくね」と満足そうな綺麗な笑顔を見せるのだった。





神宮家。
うちの家は、「調伏師」と呼ばれる霊能力者たちを率いて悪霊退治みたいなことを家業としている。

「調伏師」と大きく括っても、その能力はバラバラ。
私みたいな陰陽師やら術師やら結界師やら、果てはエクソシストまでいるくらいだ。

ちなみにうちは平安時代から続く名門らしく、この業界ではなかなかに有名らしい。

私はそんな神宮家の第二十五代目当主、……になる予定。
今のうちの当主は私のおじいちゃんなのだが、年のせいか全く表へ出てこないので、今や全権を握るのは、神宮一門でも一、二を争うほど優秀な調伏師である玲さんだ。

もしかしたら私が当主になるまでにうちの家は玲さんに乗っ取られてるかもしれない。
それくらいに玲さんはうちの中で絶大な権力を誇っている(まぁ、玲さんは昔からおじいちゃんのお気に入りだったみたいだしね)

って、今はそんなことどうでもいい。
玲さんの機嫌が悪くなる前に、例の浮遊霊を祓っておこう。

さてとー、さっさと探すかー
と、玲さんに従順なあたりに私のチキンさがはっきり表れている、と英士に言われるのはまた別の話。







ーーーーーーーーーーーー
笛!でオール連載始めちゃいました!
大体みんな出ます。
キャラが多すぎてとんでもないことになりそうですが、がんばります(笑

- 2 -


[*前] | [次#]
ページ:




×
第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -