2010/10/06 14:46


未送信ボックスからつい最近発見された
忘れられていた話
初バサラ文でもある
途中放棄注意

家康Only


自分は他の者達よりずっと高い場所から日の本を見てきたと思う。驕りではない。そのことに自分が特別な者だとも思わない、ただ、小さかった自分にその機会があった、それだけのことだ。
自分は常に天下人の下にいて、その大きく広い背の後ろから隠れ覗くよう世を臨んできた。織田信長公、太閤秀吉殿、あのお方達の後ろからずっと覗いてきた天下(日の本)は、今の自分にとって何よりも愛しいものとなった。
決して欲しいなどと思ったことはない。流れ廻り消えは生まれる四季は美しく、その中で小さな国々に生きる鮮やかな人々が眩しかった。そして、それが戦乱に傷付き散り行くことに小さな自分は、いつも胸を痛めていた。
だから、数々の戦乱を治め、天下を一つに纏めようとする天下人たるお二方は自分と同じように、いや、後ろから垣間見てきた自分よりもずっと深く、日の本を慈しみ護りたいと思っている、ずっとそう信じてきた。
信長公の天下が秀吉公に移ったとき、確かにそこに日の本の平安を感じた。太閤様の下、天下は永劫に安らかに治まるのだと、これからの先に人々の苦しみはないのだと。
戦乱の時代が明け、翌年には見事な桜が日の本に咲き誇るようになった。これからは疲弊した国を富ませる時代が来た。戦乱に怯えず、天下に生きる人々が穏やかに暮らせる時代の夜明けだった。
しかし、天下平定を成し遂げた秀吉公から信じられない話が上がった。海外出兵の令だ。
何故?日の本は平安を取り戻した。それなのにどうしてまた戦で傷付かなければならない。戦で一番に傷付くのは我らではなく、民だ。訪れた平和を捨て、争いを取った、その選択を下した秀吉公が信じられなくなった。戦で流れる国の血がどれ程のものか身をもって知っていながら、海の向こうの平安を戦で汚すことは、自分には出来ない。そして、それを後ろから隠れ覗くことも出来なかった。たとえそれが自らの仕える天下人であっても。

秀吉公を倒した時に、自分の前にある大きく広い壁が崩れて去ってしまった。そう感じた。今まで小さな背で覗いてきていた天下が目の前に広がった。そして、いつの間にか自分の背丈はずっと大きく伸びていた。先人たる英雄達の若き頃のように大きく育っていた。
秀吉公は天岩戸のようだったと思う。失礼な話だとは思うが、しかし自分をしっかりと守って頂き、そして天下の眩ゆきを隠していたその背は自分にとって確かに岩戸であった。
岩戸を失った自分は、その奥に広がっていた天下の眩ゆさに目が眩み、それすらを照らしてきた天下人の重責に身が怯んだ。
しかしもう隠れる岩戸はない、何よりずっと愛してきた日の本から目を逸らすことは出来ない。
これからは自分が、無くしてしまった豊臣という西の太陽に代わり、徳川という東の太陽になるのだと胸に決めた。
その時から覚悟した。天下に泰平を敷く為に、自分は何があっても道を譲らないと。そのお二人の天下人のように、時には非情を持って道を切り開くと。
それが自分の身を切るような痛みを持っていたとしても。
絶対に退かないと。



徳川大谷なんていう更新をした私に暖かい拍手を下さった貴方に捧げます

くさいかな(´ム`)


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