Prologue


名字名前はごく普通の高校ニ年生だ。 

ただ、人より少し大人しくて、人より少し冴えない見た目をしていて、人より少し勉強が好きなだけ。クラスメイトからは"地味子"なんて呼ばれているが、それでもごくごく普通の高校生だと言える。しかし、そんな名前には秘密があった。


「ねえこれ知ってる?ネットでバズってるんだけどカラオケ番組のやつ」
「あ、見た見ためっちゃリツイされてるやつでしょ」
「そー!もーめちゃめちゃ鳥肌立っちゃってさー、こんだけ歌えたら気持ちいいだろうなー!」
「エグいよねー!優勝した子……えーっと名前なんだっけ」
「Mari、だよ!」


クラスメイトがネットに晒された動画の話をしている。その名前を聞いた途端ドクドクと波打つ心臓がうるさい。静かに本を読み進めていた手も止まり代わりにじんわりと汗が滲んできた。


「3年前……で13歳ってことはMariってうちらと同い年じゃん!でも最近テレビ出てないよね?」
「確か引退したみたいよ。本業のミュージカルでなんかあったとかで」
「えー、そうなんだ。ちょっと残念だね」
「今何してるんだろうねー」


(誰よ今更そんなことしたの……"Mari"が優勝したのはもう3年も前の大会なのに。)

そう。

名前は『Mari』名義でミュージカルを中心に活動していた。そして今から三年前、カラオケの点数を競う"カラオケチャンプ"というTV番組で優勝し一躍有名人に。

これからの活躍を期待されていただけに、突如舞台から姿を消したとき衝撃はすさまじいものだった。


(私はもう……あの頃みたいに歌えない)



prev next

back
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -