マネージャーのお仕事
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傍らに積み上げられた大量の空ボトル。パコーン、パコーンとボールが弾む音をBGMに必死にドリンクを作っていた。

柳くんに教えられた分量通りに粉を入れて水を入れて、振る。無心でシャカシャカと振る。


ああ私は何をしているんだろう。



「しっかりやっとるようじゃの」


やっともう少しで全員分のドリンクを作り終わろうとしていたところ、後ろから声をかけられた。

振り返らなくても誰か分かるし手は止めないでいると、仁王くんは水飲み場を挟んで私の正面に回り込んだ。


「サボりですか仁王くん」


手は止めずに顔だけ上げる。え、すっごいニヤついてるんだけど。


「新人マネージャーの様子が心配で見に来たんじゃが、頑張っとるようじゃの」
「まだ臨時だからね」
「はいはい、一応そうじゃったの」
「一応ってなによお」
「臨時なんて建前に決まっとるじゃろ」


思わず、シャカシャカとボトルを振っていた手を止めた。


「私だって、別にマネージャーやりたくない訳じゃないんだよ」
「じゃあなんで一年間も拒否してたんじゃ?まあ大方予想は出来るが」


そう言った仁王くんの顔を見ると少し困ったように笑っていた。


予想できるなら反対してくれれば良かったのに!ん、でも仁王くんは意味分からないこと言っただけでお願いはされてないかも……。


「もしかして心配してくれてる?」
「それは無いナリ」
「ちょっとは心配して欲しいんだけど。今だってほら……ファンクラブの子達にめちゃくちゃ睨まれてるよね、怖いんだからね」


即答する仁王くんに小声で、フェンスの外を見るように言う。私がテニスコートに来たときからだけどファンクラブなのか取り巻きなのか数人の男女に睨まれていた。

私が移動するたびに着いてきるしきっと監視されてるんだ。てか、テニス部って男子人気もあったんだビックリ。

仁王くんはそちらを見て、少しだけ顔をしかめた、気がする。


「いやあれは……」
「睨んでるよね」
「ああそうじゃな、睨んじょる」


うんうんと頷く仁王くん。やっぱりそうだろう、うーん。これが毎日続くのはちょっとしんどいかもしれない。



「そういうことだから仁王くんは早く練習に戻ってよ。でも何かあった時は私を守ってください」
「いや、既に守られちょるんじゃがの」
「ん、どういうこと?」
「なんでもなか。出来ちょる分は運んどくきに、続きがんばりんしゃい」


そう言って、私の頭を軽く撫でてコートに向かう仁王くん。出来上がったドリンクはまとめて持って行ってくれた。



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