練習試合も全力で
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「今度の土曜、練習試合をすることになった」


ある日の昼休み、レギュラー陣とマネージャーを集めたミーティングで山城部長がそう言ったのには特に驚きはしなかった。そういえば高校総体に向けてそろそろ組んでいかないとなんて言ってたなと思いながらカキカキと日誌をつけながら話を聞いていたがその対戦校を聞いて手を止めた。まさか、聞き間違いであって欲しい。


「氷帝か〜、ジローくん元気してっかな〜」
「はいはいはーい俺跡部さんとやりたいっス!!!!」


隣で丸井くんと赤也くんが嬉しそうに笑っていて聞き間違いじゃなかったんだと頭を抱えた。そう。氷帝。氷帝学園。もちろん東京都の強豪校だから練習相手としては充分すぎる相手だしそこに何の不満もない。いやどこ相手でも不満とかは無いんだけど別の、超私個人の問題で。


「……どうしよう絶対怒られるしばかれる」
「どうしたんだよぃ鈴?」
「いや、ちょっとね、そんな大したことじゃないんだけど」
「あ、鈴先輩もしかしてマネージャーになった事言って無いんスか?」
「あー、氷帝の従兄弟?それだけでしばかれんの?」
「なんか男子テニス部にはあんまり関わって欲しくないみたいで。心配性なんだよね〜」
「あ〜、なるほどっス」


彼と仲が良い赤也くんは納得したように頷いている。関わって欲しくない理由としては私がマネージャーになるのを渋っていたそれと同じで、私の身を案じてくれているのだと思う。あの性格だから直球で言われたわけじゃないけど。

多分、氷帝はうち以上にファンクラブが過激だからそのイメージが強いのかもしれない。今のところ危害とかないしこれこらも多分大丈夫だと思うんだけどね。


「じゃあ俺から言っとくっスよ。メッセ送っときます」
「本当?じゃあ〜無理矢理やらされてるって言っといて」
「それ俺らがしばかれるやつだろぃ」
「流石に先輩はしばかないと思う……うそうそ。大丈夫だよ赤也くん今度直接言うから」
「そっスか?りょーかいっス」


……じゃないと多分火に油。青筋を浮かべた彼を想像して今から気が重くて小さく息を吐いた。

練習試合としてはお互いに地区大会前の調整という形になると部長は言っていたけど、多分本気になる人達のことを考えて消耗品の買い出しておかないといけないな、と必要なもののメモをとる。ドリンク類と救護セットと……うん、ついでに買えるものは買っておきたい。


「すみませーん、消耗品の買い足しに行こうと思うんですけど何か必要なものありますかー?」
「そうだな……消耗品の管理は植原に任せるとして、試合用に新しいボールと予備のグリップテープを補充しておくか」
「了解です」


部長が言ったものを追加でメモする。ちなみに山城部長は三年生レギュラー二人のうちの一人で、目つきも悪いし身体も大きく、恐く見られがちだがしばし花壇のお世話をしているのを目撃される美化委員長でもある。そのギャップにやられる女子も多いとか。私的にはよくこの癖の強いメンバーを纏めれるよなという感情。尊敬します。


「じゃあ、今日ドリンク準備が出来次第行かせてもらっても大丈夫ですかね?」
「ああ、すまんが頼む」
「鈴一人で大丈夫かい?結構な量になるだろうけど」
「一番近いショップで済ませれると思うし丸井くんに自転車借りるから大丈夫」
「初耳〜、まあ全然貸すけどよぃ」


急にお願いしてみたけど丸井くんならそう言ってくれると思ってた。流石に歩きじゃしんどいから助かります。ありがとう。



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