マネージャーのお仕事
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* * *
「ドリンク持ってきたぜよ」
コートに戻ると丸井やジャッカルなど数人がコートに入っていて、後ろから幸村と柳がそれを見ていた。ゲーム形式の練習じゃろう。
植原のつくったドリンクを二人に渡すと、一口飲んで満足そうに頷いた。ドリンクは合格じゃ、良かったの植原。
「で、仁王。どうだった?」
「ああしっかり見張りがおったぜよ」
植原本人はその存在を知らないらしいが、
植原鈴を取り巻く"親衛隊"と呼ばれるファンクラブがあることは有名な話じゃ。
植原を見守ると言うのが基本スタンスの親衛隊は、テニス部のファンクラブと違って穏健で、嫌がらせをしようだとか直接手を出して来ることはない。
フェンスの外で植原を見ていたのもその一部じゃ。流石にファンクラブから危害が及ぶかもしれない男子テニス部のマネージャーにしたことは良く思ってないじゃろう、ああやって監視に来ちょるらしい。
本人は俺たちのファンクラブに睨まれとると思っちょったがの。
勿論幸村も植原の取り巻きの存在は知っているため、それとなく様子を見てくるように頼まれていたのだが。
「やっぱりそうか。それならうちの取り巻きも鈴に手出しは出来ないだろうね」
「そうだな、植原に危害が加わる確率は39%、というところか」
「決して低くはないか……でもまあ、良い方だ。鈴は嫌がらせされると思ってかなり心配してたからね」
そう、幸村は植原がファンクラブの目を恐れてマネージャーを断っていたことに気づいていた。
じゃが柳の言った通り危害が加わる確率は低い。それは植原の場合、親衛隊の存在が抑止力になるからじゃ。親衛隊のトップは元柔道部主将じゃしおもな構成員は運動部じゃ、敵にまわしたら厄介じゃからの……テニス部のファンクラブも迂闊に手出し出来ない、という事じゃ。
幸村という男はそれを分かっていてその存在を利用しようとしているんじゃからとことん恐ろしい奴だ。
逆にじゃが。
「万が一にでも植原に危害が加われば俺等がボコボコにされるぜよ」
「そうだな。俺達もしっかり見張っとかないと」
「ああ、渡辺からも注意するように言われた。植原が傷つくことがあれば普段大人しい親衛隊も黙っていないだろう、とな」
「そういえば柳は彼女と同じクラスだったな。それは気をつけなきゃ」
実際に今までのマネージャーはあいつらの嫌がらせのせいで全員辞めている。
まあ、それでも植原をしつこく勧誘した理由はあるらしい。幸村いわく、植原のサポート力は評価しているしテニス経験者だし可愛いし癒されるから。だと。
なんて自己中なやつなんじゃ。本人には口が裂けても言えんが。
「仁王は同じクラスだし、なるべく鈴から目を離さないように」
「了解」
「せっかく鈴がマネージャーになったんだ、辞めてほしくないからね」
ほら、臨時なんて言葉はただの建前じゃろ?
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