お久しぶりです
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結局大人しく始業式に出席した私はその後のHRにも大人しく出席していた。
のだが。
「鈴〜、なんかすっげえ久しぶりじゃね??」
「そうじゃなぁ」
「……」
私の目の前に赤髪、右隣に銀髪。
丸井ブン太と仁王雅治だ。
軽く自己紹介を終えて、席替えをする事になった。私の引いたクジが窓側の一番後ろの席でラッキーとか思ったとこまでは良かったのだ。
そこまでは良かったのに、私の目の前に赤髪が満面の笑みで座った。そして隣に銀髪が座った。
仁王くんに関しては本来座る筈だった女生徒になにか耳打ちして譲ってもらってたからね!
テニス部と同じクラスになりたくなかったのに同じクラスどころか二人に挟まれるってどういうこと。
「なんか俺らに会いたくない理由でもあんのかよぃ?」
「どうせ幸村くんから何か言われてるくせに、最悪。話しかけないでください」
「まあそう怒るなって!お菓子食う?」
「……食べる」
「相変わらず単純ナリ」
ニヤニヤと笑ってからかう丸井くんに差し出されたお菓子を遠慮無くもらう。今はHR中なんでちゃんと後で食べるよ。
「その幸村くんなんだけどよ」
「うん」
私は訳あって彼らテニス部を避けていたわけだけど、実際に避けてたのは元部長である幸村くんだけだった。
でも他のテニス部も私を幸村くんに会わせようとするから避け始めて……結局1年間くらいテニス部に会わないようにして、会うことがあったら話しかけられる前に逃げた。
ばったり会ったとしても、ジャッカルくんとか柳生くんは私を売るようなことしなかったけどね、ジェントルだからね。
「まあ、放課後話があるってよ」
「だよね知ってた」
そう言ってこっそりケータイの画面を見せてくる丸井くん。
画面を見てぞっとした。
『放課後鈴を必ず部室に連れてくるように』
「怖すぎない?」
「流石にもう逃げられんな」
「これ、私死ぬ?」
「可哀想にのう、よしよし」
私を慰めるように軽く頭を叩く仁王くん。いやいやちょっと馬鹿にしてるよね、慰めてると見せかけておちょくってるよね。
「同情してるつもりなら帰らせて欲しいんだけどなあ」
「まあ部室には連れて行くがの」
「そうだな、可哀想だけど」
「……」
「俺等が何言われるか分かんねえし……」
「それが本音かああああ」
私の1年間の苦労が水の泡となった瞬間である。
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