可愛い後輩のあり方
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「あ、仁王くん」


ドリンクの補充をする為に空のボトルが入ったかごを抱えて水飲み場に行くと、丁度仁王くんが居てどうやら顔を洗っていたらしい。声をかけると顔を上げて、なぜか私の顔を見て眉を潜めた。

そういえばなんか機嫌悪かったんだよな。もしかして、スコア取りミスしたの怒ってる?いやそれは私が悪いんだけど。

仁王くんの隣にかごを下ろして彼の顔を覗き込む。


「仁王くんなんか機嫌悪い?」
「いや…………………別に」
「嘘だ怒ってるよ。顔怖いもん」
「怒ってないぜよ」


ぽたぽたと水を滴らせながら私を見る仁王くんは、一見いつもと変わらないように見えるがやはり不機嫌さは隠せていない、と思う。

というか顔洗ったばっかりだから水滴でポロシャツが濡れている。


「顔拭かないと風邪ひくよ?」
「タオル無い」
「え、何で」


何で顔洗ったの?とは思ったけどまぁそういうときもあるよね。貸してあげたいけど生憎、今手元にあるタオルは自分の首にかけたそれだけだった。


「私のしかないけど、使う?」
「ん」


使うらしい。

仁王くんは私の首元に手を伸ばすと、少し屈んでそのままタオルに顔を埋めた。え。


「そのまま拭くんだ?」
「………植原の匂いがするのぅ」
「凄い変態みたいだよそれ」
「事実を言ったまでじゃ」


そう言いながらグリグリと顔を押し付けてくる仁王くん。流石にもう乾いたんじゃないかなぁと思いながら真横にある仁王くんの頭を眺めた。

近いな。すごく近いな。


「仁王くん、なんか嫌なことあった?」
「んー?あー……」
「私のミスは謝る、ごめんね」


静かに顔を上げた仁王くんがぽん、と私の頭に手を置いた。


「そんなことじゃ怒らんぜよ。プレイが上手くいかんくてのぅ。もう頭冷えたから大丈夫じゃ心配しなさんな」



確かにその顔はいつも通りの仁王くんに戻っているような気がする。


「そっか……何かあったら言ってね?私に出来ることなら何でもするから」
「やっぱ凄腕マネは言うことが違うのぅ」
「茶化さないでくださーい」
「わかったわかった。何かあったときはお前さんに言うぜよ」


笑いながら私の頭をぽすぽすと叩く仁王くんは完全にいつも通りの仁王くんだった。元気そうで安心した。

にしてもぽすぽすぽすぽす叩きすぎだけどね。


「俺は先に戻るぜよ。お前さんもあんまり長居しなさんなよ」
「あ、うん。ありがとう」


そう言って仁王くんはひらひらと手を振ってコートに戻っていった。






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