平和が一番
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昼休み、私は中庭で伊織と共に昼食を食べていた。

中央の桜の木は満開で樹下は太陽の光も当たらなくてとても心地が良い。教室と違って静かで、ゆっくり伊織に会える私にとって唯一の癒やしの時間。


「幸せってこういうことなのね」


思わず口に出すと伊織に不思議そうな顔で見られた。


「どうしたの?」
「なかなか伊織に会えないから寂しい……」
「確かにそうね。なかなか時間合わないものね」
「そう!だからこの昼休みが幸せだなって思って」


マネージャーになってからは朝練の為に早起きして登校しないといけなくなった。早起き事態は苦手ではないし特に苦痛ではないが……伊織と朝、一緒に登校出来なくなって終わる時間も違うため下校もできないことが苦痛。

小学生の時から一緒にいるけどこんなことは殆ど初めてで正直本当にすっごい寂しい!ちなみに伊織は演劇部です。


そんな気持ちを込めて軽く伊織に抱きつくと、優しく頭を撫でてくれた。落ち着く……伊織は女神様なの??


「好き」
「はいはいありがとう」


やっぱり冷たいけど。





「マネージャー大変そうね」


それから色々とお互いのクラスの話なんかをして、話題は私の部活のことに。


「うーん……そうだね、大変だけど選手のみんなに比べたらすっごい楽だと思う。凄いんだよねあの人たち」
「へえ、そうなの」
「うん。ちょっと見直してる」


自分も一応経験者だし彼らの人間離れした凄さは身にしみて感じる。とにかく練習量が半端じゃないし……マネージャーになって改めて、立海テニス部の凄さを思い知らされたって感じだ。

そんな彼らのサポートが出来るのは素直に嬉しいしやりがいあるし、何よりテニスに関われて嬉しい。絶対本人達には言わないけどね!


練習の様子を思い出しながら話していると、伊織はクスクスと笑いはじめた。


「なに?」
「マネージャーするのあんなに嫌がってたのにね」
「う……だってファンクラブ怖かったし。てか今でも怖いし」
「そう?あたしは大丈夫だと思うけど。むしろテニス部の方が心配だわ、鈴のファンに良く思われてないだろうし」
「何それ、私のファンなんていないよ?」
「……は?」


呆れたような顔をしたかと思うと、直ぐにため息をついた伊織。

私何かおかしい事を言ったかな。


「伊織?」
「天然。本当、無自覚って怖いわね」
「え、え?」
「いいわ、それが鈴の良いところだから。鈴はそのままで居て」
「????うん?分かった」


とりあえず頷くと、伊織に頭を撫でられたがやっぱり意味は良く分からなかった。


「……今まで通り、鈴には接触しないようあいつらに言っとかなきゃいけないわ」


うん。でもなんか大変そう。



私が気づいてないだけで伊織にはかなり迷惑掛けてるんだよねいっつも。凄く感謝してるよ大好きだよ伊織さん!!

思わずまた抱きつくが直ぐに引き剥がされた。


「しつこいわよ」
「つい、身体が勝手に」
「痴漢の言い訳みたいなこと言わないで」


頭を叩かれた。涙目で睨むと、少し笑って立ち上がった伊織。


「あたし本返しに行かないといけないから図書館行くけど。鈴は?」


ああ、もう昼休みが終わる時間か……。


「んー、次移動だし……教室戻るね」
「戻りたくないって顔に書いてあるわよ」
「ハイ、午後の授業メンドイデス」


そう言うと伊織はクスクスと笑って頑張りなさいよ、と言った。

伊織にそう言われたら頑張らないといけない気がするし、万が一にでも成績が落ちたりしたら幸村くんに何言われる(される)か分かんないから頑張ります……多分。ちょっと気分が乗らないけど。


「伊織ぃ、また明日も中庭ね」
「はいはい。また明日ね」


名残惜しいけど、ひらひらと手を振って伊織と別れた。




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