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* * *
「まいったな」
どっちがデケェ獲物を狩れるか、なんてコックとのくだらねえ勝負の為に船を飛び出したは良いが帰る道が分からなくなった俺は完全に迷っていた。
つたの巻いた木を左に進めば船に戻れた筈で、狩った獲物をズルズルと引き摺りながら何度もそうしているが一向に戻れる気配はない。
「確かにこの木に見覚えがあるんだけどなァ……ん?」
見覚えのあるその木に触れながら首を捻ると、何故か来る時には見かけなかった泉の様なものが視界に映った。あんなところに泉なんてあったか?と、ジッと目を凝らして見るとその泉の側に何か黒い塊の様なものが見える。それはまるで人の様な形をしていて。うん?
「……人、か!?」
駆け寄るとそれはやはり人で、顔に掛かった茶色く長い髪を払うと真っ白な顔が見えた。多分、俺と同じぐらいの歳の女だ。見たところ流血もなく目立った外傷も見当たらないが、苦しそうな表情で酷く汗をかいている。
「おい、大丈夫か?」
頬を叩いて声をかけるが返事はない。息はしている様子からどうやら気を失っているだけらしい。どうしたもんかと頭を抱える。一瞬、この島の住人かとも思ったが流石にこの歳の女が1人で住めるとは思えねェ。
とりあえず船に連れてくか。危害が加わるとは思えないが念のためその辺のつたで身動きを封じ、先程狩ったサイの上に乗せた。よし、戻るか、と意気込んだ所でふと思い出す。
「そういえば戻れねェんだった」
いや、もう一回だ。と、ズルズルと女が乗った獲物を引き摺りながら木を左に進見始めたところでそれを見つけた。別の大きな木に寄り掛かって立っているうちの航海士だ。
「おお!ナミじゃねえかちょうどよかった。そこで変な女を拾ったんだが道を見失っちまってよ………ん?」
話しかけるが返事がない。というか、よくよく考えればビビリのあいつがこんな所で1人で居るわけねェだろ。どう考えても様子がおかしい。
「おい?……ッッッ!!」
その理由はすぐに分かる事になった。
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