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* * *


「い、いやあああああああああ!!」
「どうしたんだユリちゃん!?」


船室から悲鳴が聞こえた。それは紛れもないリトルガーデンで見つけた新しい仲間、ユリの声。慌てて飛び込んでいくサンジに続いておれたちも船室に入ると、そこにいた”それ”に目を疑った。


「なっ、おおおおおおい、なんでご、ゴリラがこんなところに!!??!」
「なんだこのゴリラ強そうだな!!」


そこにユリの姿は無く、代わりにおれたちより二回り以上はでかいだろう茶色い毛の、紛れもない、ゴリラが立っていたのだ。あまりの衝撃に腰が抜ける。やべえだろ。もしかしてユリのやつこのゴリラに喰われちまったのか!?隣にいたゾロを盾にして足にしがみつく。


「お、おれは喰ってもうまくねェぞ!喰うならゾロを喰ってくれ!!」
「おい。ゴリラは肉食じゃねェ」
「そこじゃないだろクソマリモ。………じゃあユリちゃんはどこいったんだよ」
「おいこのゴリラ仲間にしよう!」
「しねェよバカ船長」


サンジとゾロがおれの頭上で睨み合っている。ルフィはキラキラと目を輝かせてやがるし。そんなことしてないで目の前のそれをどうにかしてほしい。目の前のそれはいまだに立ち尽くしたまま微動だにしない。……いや、小刻みに震えてる?え。

目に大粒の涙を溜めたかと思うと次の瞬間、ぼろぼろと涙をこぼして泣き始めた。


「お、おいなんで泣いてんだよこのゴリラ!?」
「おれが知るかよこいつに聞けよ」
「言葉が分かるわけねえだろ!?」


そんな事を言い合っていると、スタスタとおれたちの横を通り過ぎていく影が見えた。ビビだ。


「ちょっと、ビビちゃんあぶねえって」
「大丈夫よサンジさん……………ね、ユリさん」

そういってゴリラの手をとったビビ。


はい?


「ううう、ビビぃぃぃぃ。どうしようゴリラになっちゃったああああああああ」


わんわんと泣きながらビビに抱きつくゴリラ……もとい、ユリ。



「「「「はああああああ!?ユリ(ちゃん)がゴリラあ!!?」」」」



おれたちの叫び声が海上に響き渡った。

 

* * *



「まったく、情けない男たちね。それにしても驚いたわねユリ」
「…………………………ゴリラって………………ゴリラってなに………」


よしよし、とナミがゴリラの姿のまま膝を抱えて座っている私の頭を撫でてくれていた。

あの小猿曰く、やっぱり私が食べたのは悪魔の実で、その能力でサルの言葉が分かるらしくて。そしてその小猿がちょっと自分がゴリラになってるところ想像してみて〜何て言うからやってみたらこれだ。鏡に写った自分をみて悲鳴をあげた。

まさか本当になるとは思わないじゃん。


「もうお嫁にいけない」
「大丈夫よずっとその姿ってわけじゃないんだし」
「図鑑載ってたわ。サルサルの実、モデル大猩々ですって」


そう言ってビビが見せてくれた図鑑には、しっかりと私が食べたものと同じ形同じ色の"悪魔の実"が載っていた。動物系、って言うんだって。


「……とりあえずユリ、元に戻れる?その姿だとやっぱりちょっと落ち着かないわ」
「あ、うん」

目を閉じて元の自分の姿を想像する、とぐんぐんと目線が低くなり人間の姿に戻った。何となくだけどそうすれば戻れるってのが分かったんだけど悪魔の実の能力ってこんな感じなのかな。


「あ、戻っちまったのかユリ!」


丁度そのタイミングで、何故か頭に小猿を乗せたルフィくんが船内に戻ってきた。他のみんなもゾロゾロと船室に入ってくる。私が落ち着くまで、とナミが追い出してくれていたのだ。


「うん、お騒がせしました」
「なんだよつまんねえな〜もっかい変身してくれよ!勝負しよう!」
「もっとこの能力がコントロール出来るようになったらいいよ」
「そうか、分かった!」


そう言ってニッ、と笑うルフィくん。まぁ、この能力を手にしてしまったものは仕方ないし……ちゃんと理解して、上手く使いこなせるようにならないとね。

とりあえずあの小猿が知ってる事を洗いざらい吐いてもらおう。



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