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「おい……なんだこれァ」

執務室の壁に掛けられた時計の短針がちょうど4時を指しているころ、おれは目の前で起きている光景に頭を悩ませていた。


「ん〜?見てわかんだろ、リリアンちゃんだけど」
「んなこたァ分かってんだよ」


頭を悩ませる原因のそれは、目の前にソファに小さく丸まって気持ちよさそうに寝息を立てていた。

傍らのローテーブルには食べかけのケーキであろうものが乗った皿とティーカップが2対置いてあるため、休憩をしていたのだろうなという所までは想像できる。

手付かずの書類が山積みになった執務机に怠そうに向かいながらも、仕事をしている様子はない上司に向かって尋ねるが期待する答えは返ってこなかった。

もう一度問う。


「何でこんなとこでこいつァ寝てんだ!!」
「おいおいあんまり騒ぐなよスモーカー。リリアンちゃんが起きちまうだろォが」
「いや起こせよ。勤務時間中だぞ」
「いやァなんか最近寝れてなかったみてェでさ。そんなに気持ちよさそうに寝てんのに可哀想だろ?」
「アホかてめェは」


さもそれが当たり前だと言うような顔で平然と答える青キジにおれは再び頭を抱えた。とんだ親バカならぬ上司バカだ。前々から思っていたが青キジはリリアンに甘過ぎる。

おれははぁ、とため息を吐いてソファに丸まるそれに視線を向けた。先程と変わらずスヤスヤと気持ちよさそうに寝ているそのあどけなさの残る年相応の寝顔におれは起こす事を躊躇ってしまった。


「……起こさねェの?」


それに気づいた青キジがニヤニヤと此方を見てくる。少しだけこいつの気持ちが分かったのがムカついたが、そのままにしておくわけにはいかない。おれは再びリリアンに目を向けた。


「んんん……」


薄く開いた唇から小さく声が漏れる。よく見るとその傍にはケーキの食べカスらしきものが付いていた。


いや、ガキか。





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