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これから表記する事はあくまで私がまとめたフィフス式シード教育法。
本来シードとは中学サッカーの強さだけで価値の決められていた時、その学校がフィフスセクターの指示に従っているかどうかを監視する役割だったが、今では反乱軍に対するための力が要され、戦争の道具として育てられるようになった。

その教育法の内容は至ってシンプルだ。

その内容を大きく分けると三つ。
一つ、勉学。人の価値とはサッカーの強さの次に大事な知能で決まるとフィフスセクターでは教えられる。体を動かす以外の時間は全て勉学にあてる。それこそ寝る間も惜しんで。
二つ、サッカー。この世界で生きていくために絶対的に必要なもの。これを為さない者は社会の屑、塵、ゴミ。基礎体力作りから何もかも全てが地獄。
三つ、化身。本来サッカーに含まれるべきものだが、普段の練習(それでも地獄)からは考えられないような命がけの特訓が待っているから“サッカー”とは別格である。

そんな中でよく私は16年間も生きてこられたと思う。実際にここまでこれるのはごく僅かであるし。昨日やっと友達になれた子が次の日にはいないなんて珍しい事では無い。それが普通だと思っている私も私でどうかしている。いつになっても、歳を重ねてもこの胸の空虚感が無くなる事は無いのだ。

「よお?e-500チャン」

サッカーボールを打ち出す機械の設定されたノルマを終えた途端だ。嫌な声が耳に入る。私は聞こえないフリをする。

「無視かよ」
「何か用、剣城」
「そう怒んなってこえーな」

ギロリと某家庭教師のような髪型をしている一つ年下の生意気な剣城を睨む。去年と比べれば大分背が伸び大人びた顔つきになってきたと言うのに中身は全く変わらない。所詮ガキ。なのにフィフスセクターで特別扱いされる最高権力者のお気に入りなのだ。趣味悪いよね。

「明日だな」
「ああ、覚えててくれたの、祝福ならドウモありがとう私幸せになるから」
「はっこんな世界で幸せになんてなれるかよ」
「その通りね、さっさと消えて目ざわり」

私のその態度に剣城は何とも面白そうに笑う。本当めざわりだ。ああいう奴を見ると殺したくなる。

「なあ、知ってるか?結婚したら初夜にヤるって」
「あんたにはまだ早い話でしょ。三年間指吸って待っとけ、ガキ」
「口の悪い女はモテねーぜ」
「この世界ではモテなくても結婚出来ますから」

ニコリと口だけ笑って彼の傍を通りすぎる際「死ね」と聞こえるか聞こえないか程度の声で言えば、地獄耳な彼には聞こえていたらしく「テメーがな」と余裕そうに返された。まあ、あんな奴でもフィフスセクターには良いように動かされてるんだから完全には嫌いになれないのも事実なのだけれど。…けれど、やっぱアイツ嫌い。



いつもは辛く長い一日が今日だけ早く感じた。いつの間にか夜になっていた。
同じ部屋の倉間に「おやすみ」と声をかけると「おやすみ」と返ってくる。いつもはそれで嬉しくなるはずなのに今日ばかりはそう思わない。だって、これが最後なんだ。

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