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薄暗い研究室に、赤いスーツに身を包む男は苦々しい表情を浮かべている。その隣では無表情で動かす手を早める男。小さな研究室で二人は小声ながらも会話を始める。

「どうしてこのような結果を招いてしまったのだろうな」
「どうして、なんて分かりきっている事だな、醜い人間の本能に原因がある他ない」
「俺の努力が足りなかったせいだ」
「それは違うぞ、イシド。お前はよくやった」
「良くやったも何もない…!裏で手を回して助けていたつもりの施設や学校も…!俺の陰謀がバレて更にひどい仕打ちをフィフスセクターは…!そうだろう、鬼道…?!」
「お前がいなければ所詮潰れていた所ばかり
さ、そう気に病む事は無いだろう?」
「しかし…」
「イシド…。何もお前だけの責任というわけではあるまい。この状況を知りながら見てみぬふりをしている、それこそ今の社会で下位に立つ者、権力を振るう者全てに責任があるんだ」
「………俺達は一体これからをどうしていけば良い?」
「今、反逆に名乗りを上げる者も少なくはない。アイツがレジスタンスの勢力を広げている間に俺達にはやるべき事があるだろう?」
「……成果は?」
「帝国の生徒達も必死で動いてくれている、もうすぐだと期待しておけ」
「…ふっ、帝国もフィフスの目を避けよくやる」
「褒め言葉と受け取っておく」
「紛れもなく、褒めている。それから、鬼道」
「何だ」
「俺はもうイシドではない。…豪炎寺修也だ」
「…そうだったな」

俺達の代で、戦争は最後にしよう。
激しく苦しい最後になりそうだがな…。

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テーマ「人外ファンタジー」
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