新年



今年最後の日は好きな人と一緒にいたい。そう思うのは当然だと思う。
大晦日なのにいつもと変わらない彼氏の部屋を一緒に片付けて、その後火燵でごろごろとテレビを見ながら年越蕎麦を食べる。で、そんなこんなで年が明けてあけましておめでとうって言った後は少しいちゃついてから初詣に出掛けて…。
そんなのほほんとした大晦日があたしの理想。初日の出を見に行くっていうのもいいとは思うけど、寒いし遠出するのもめんどうだからそれはパス。だって、最後の日くらいゆっくりしていたいし。まぁ、けどとりあえず彼氏と一緒に過ごせるならなんでもいい。……確かにあたしはそう思っていた。

だけど、これがあたしの望んだ大晦日なのか、と聞かれるとあたしはきっと首を全力で横に振ってしまう。

あたしの理想と流れはほとんど一緒なはずなのにあたしは満足するどころか不満ばかりだ。…彼氏と一緒に過ごせるまでは良かった。強いて言うならその彼氏が桔梗なのが問題だったのかもしれない。

まずは大掃除。エロ本とかが出て来たらどうしようと少しドキドキしながら桔梗の部屋を掃除していると出て来るのはルリ花ルリ花ルリ花ルリ花ルリ花だらけ。エロ本が出て来なかったのにも関わらず素直に喜べない。
そしてそれが終わって火燵に入ってテレビを見ようとした途端いきなり再生されたルリ花のDVD。なんでも、ルリ花を見ながら年を越したいらしく、年越蕎麦を食べてる今現在もテレビではルリ花が流れている。そしてあたしの隣にはそれをガン見しながら目を潤ませている桔梗。……こんな、彼女ほったらかしでアニメに夢中な彼氏との年越しをあたしは望んだ覚えがない。
もうちょっとこう恋人同士のムードとか出していちゃつきたいのが本音。だけど、そんな願いが桔梗に届くはずもない。

…あまりにもほったらかしにされすぎて一瞬テレビのコンセントを引き抜いてやろうかという邪心が芽生えるもそんなことをしたら無事に年を越せる気がしないのでさすがにその考えは振り払った。
けど、やはり少しもこちらを見てもらえないのは悔しいし寂しい。仮にもあたしは彼女なのに。

どうにか気付かないかなー、と恨めしげな視線を送ってみるも桔梗はテレビに夢中で気付かない。うん、普通に悲しい。

そろり。悔しいからそっと桔梗の手と自分の手を絡めて恋人繋ぎにするとようやく桔梗がこっちを見てくれてどきんと胸が高鳴った。

……のに。

桔梗はしばらくあたしを凝視しただけですぐに視線をテレビに戻してしまった。…無念。
だけど、繋がれた手はそのままだったから潔くそれで諦めることにしよう。そう思ってぎゅっ、と手を握ると小さく握り返された気がして、それだけで幸せな気持ちになれた。

あ、年明ける5秒前だ。

ふと、時計を見てそのことに気付く。桔梗と手を繋いだままルリ花の声で消えてしまうくらい小さな声でカウントダウンを始める。


「5……4……3……2……1……、」


あけましておめでとう、と桔梗に言うために桔梗の方を向いたのと繋いでいた手を引っ張られたのはほぼ同時だったように思う。繋いでない方の桔梗の手はあたしの頭を固定するのに使われていてくしゃり、と髪が擦れる音がいつもより鮮明に聞こえた気がする。そして目の前には桔梗の端正な顔のドアップ。おまけに唇には何かに圧迫されている感覚。

それがキスだと理解出来たときにはもう桔梗は離れていて、あまりにも突然だったためにあたしはうまく反応出来ずに桔梗を見つめることしか出来ない。


「初キスだな」


そう言って満足そうにいつもより少しだけ口角を上げた微笑みを浮かべる桔梗に新年早々ノックアウトさせられたあたしは今年も桔梗に愛想を尽かすことはなさそうです。










(ねぇ、今から初詣行こうよ)(…人多いからめんどい)(えー)(…大体何をお願いするんだ?)(……)(……)(…今年こそ、…やっぱなんでもない!)


今年こそルリ花に勝てますよーに!










20110104


桔梗ってなんか突然大胆な事しそうだなーって考えてたらこんなのが出来た←
…あれ、本当は大晦日から初詣まで書くつもりだったのに年明けて終わったww桔梗がキスなんかするから…!(笑)

とりあえず今年もこんな桔梗しか書けないけど、素敵な咲羽をお願いね←







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