おまじない




高校生の男子の家に女子が泊まるというのはその二人が幼馴染みといえども一つ屋根の下で二人きりともなればやはりいけないことなのだろうか。だけど、今のあたしにはそんなことを考える余裕がまずない。
…なぜなら、数日後に期末テストがあるからだ。しかもあたしにとってはただの期末テストではない。留年がかかっている。

そのことを先日先生に告げられたあたしは必死に勉強しようとするも授業をいつも真面目に聞いてないあたしには全部がちんぷんかんぷんで何をどう勉強すればいいのかさえさっぱりわからなかった。…そこで、幼馴染みで成績優秀な桔梗に頼み込んで泊まり込みで勉強を教えてもらうことになったのだ。そんな崖っぷちなあたしにこのお泊りを楽しむ余裕はない。


「違う。ここはこうなるから答えはこれだ」
「あ、そっか!」


桔梗の綺麗な指先が問題集を辿り、わかりやすく説明してくれる。その説明を頭に叩き込んで同じような問題を解くと桔梗が答えを見ながら軽く頷いた。


「やればできるじゃないか」
「桔梗の教え方がいいからここの範囲はもう完璧!」
「じゃあ、ここ解いてみろ」


桔梗が指差した問題は応用問題で、ぱっと見ちょっと難しそうだ。確かに完璧とは言ったけど、あたしに応用問題なんて解けるわけがない。そう思いながらも桔梗からの痛いほどの視線を受け渋々問題に目を通す。ほら、やっぱり全くわから……ん?


「正解」


桔梗が赤ペンで丸をするのを見ながらあたしは呆然とするしかない。
…解けてしまった。基礎ですら解けるか微妙だったあたしが数時間で応用が解けるようになるなんて何これ何て言う奇跡?


「今日はここまでだな」


驚きやらなんやらで呆然としていたあたしは時計を見ながら呟かれた桔梗の言葉に、我に返り桔梗に釣られて時計を見る。
…まさかこんなにも時間が経っていただなんて。あたし桔梗が先生なら学校の授業も頑張れる気がする。


「先に風呂入ってこい」
「え、あたし後でいいよ」


眠たそうに欠伸をした桔梗を見るとなんだか申し訳なくなってくる。いっつも徹夜でゲームしたりしてるから多分まだまだ起きてられるとは思うけど、やっぱりただでさえ迷惑を掛けてるのにこれ以上桔梗の睡眠時間を減らすのは忍びない。そう思ってお風呂の順番は後でいいと言えば桔梗はあっさりと引いてくれたのでホッとする。

お風呂に向かう桔梗の背中を見送り、広い部屋に一人ぼっち。当然のごとくとても静かだ。そしていきなり暇になってしまった。勉強道具を片付けてから辺りを見回すも暇を潰せそうなものはない。


「ひまー…」


手足をだらんとさせ、頭をのけ反らせ眩しい光を放つ電灯を眺めながら呟いた独り言は誰が聞くでもなく虚しく消えた。
独り言を呟いたところで暇じゃなくなるわけでもなく、しばらくその状態のままぼーっとしてたら突然お腹の虫が鳴った。…誰もいないとはいえちょっと恥ずかしくなりながらも今のでちょうどいい暇潰しをひらめいたあたしは勢いよく立ち上がり台所へと向かった。
ここにいても何もすることもないし、ちょうどお腹も空いてるから台所を借りて簡単に何か作っちゃえ、というノリだ。先に桔梗に台所を借りることを伝えた方がいいかな、と思ったけどそこは勝手知ったる他人の家。幼馴染みの特権である。










「……」


意味がわからない。風呂から上がって部屋に戻るとそこには机に俯せになって寝てる幼馴染みの姿。そしてその幼馴染みの頭の近くにはききょう、と自分の名前がケチャップで書かれているオムライス。
…オムライスを作ったと思われる人物はきっといつもはそんなに使わない頭をたくさん使って疲れたのだろう。ぐっすりと眠っていて起きる気配はない。
…やっぱり先に風呂に入らせるべきだった。そんな後悔が頭を過ぎって思わず顔をしかめる。


「ききょ、」


自分の名前を寝言で呼んでるのを聞いて、しかめたはずの顔の口角が少し上がったのが自分でもわかる。
さらり、寝言を言った際に身じろぎしたせいで前髪が落ちておでこが見える。そのおでこを見ていたら昔を思い出して……。いつの間にか、無意識に、体が動いていた。








諦めるかけてるときにおでこにキスをしてやると昔からお前はどんなことだって最後まで頑張ってやり遂げてみせたから、






20101207 蓬

最後のでこちゅーは留年しないように頑張れっていう桔梗からのエール……なはず←

ものすごい不完全燃焼…(´・ω・`)
とりあえずテスト期間中だからめちゃくちゃな文章になったって言い訳してみる←





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