放課後、昨日忘れ物をしたのを思い出して部室へ向かう。
早く取ってきて早く帰らなければ。
少しでも試験勉強をしたいし。
まぁ、たいてい遊んじゃうのがオチなんだけれど。
「えーっと…、あったあった」
目的の物を鞄にしまい、帰ろうとした。
けれど、カタン、という音がして振り返る。
「わっ、あ、準太…」
「なにやってんだよ。」
「え、ああ、忘れ物取りに来たの。」
誰かと思ったー、とホッと胸を撫で下ろす。
いるなら声くらいかけてほしいものだ。
「なぁ、」
「なに?」
「…慎吾さんかと思った?」
「…っ!…そんなわけ、ないじゃん」
少しでも期待してた、なんて気づかれないように平然を装う。
なんでだろう、会いたくないのに、会いたい、なんて思ってしまうなんて。
やっぱり、好き、だからなのかな…。
「…んな顔、するなよ」
「え、?」
準太の言葉に顔を上げる。
でも、こちらからは準太の顔はよくみえなくて。
どんな表情をしているのかわからなかった。
「……」
「準、太?」
「…なんでもない。帰るぞ」
「え、あ、うん…」
そういって背を向けて部室を出ていく準太のあとを追う。
なんだったんだろう、そんなことを考えながらも、前を歩く準太の隣に並ぶため小走りをした。
夏独特の生温い空気を感じながら、彼の隣でまだ青い空を見上げた。
いま、彼はどうしているのだろうか…――。
110331