愛おしそうに瑠花さんを見ていた慎吾さんを見て、堪えられなくなってその場を離れた。
家にこのまま帰るのもなんだか嫌だったので近くの公園に寄る。
一人になると、切なくて苦しくて、涙が溢れてきた。


「名前…?」

「っ…!じゅ、んた…?」


声のした方をみると、準太が立っていた。
街頭に照らされて準太の驚愕した表情が見えた。
そのまま準太は私に近づいてきて。
ベンチに座っている私の正面に立つ。


「なんか、あったのか?」

「べ、つに…、なにもないよ」


心配そうな声色に、なんでもないように明るく話す。
そんなことしても準太にはばれそうだけれど。


「…慎吾さんと、なんかあった?」

「っ…!!」


なんで、準太にはわかってしまうんだろう。


「…なんでも、ないから…。帰ろ?」

「でも、」

「大丈夫だって。」


涙を拭って立ち上がる。
心配そうな顔の準太に笑顔を見せて、もう一度帰ろう、と言った。
準太は腑に落ちない顔をしながらも、私の横に来て歩き始めた。

いまは、話したくない。
ううん、自分でも、よくわからないんだ。




朝、家を出るとちょうど準太も出てきたようで、一緒に行くことになった。


「…昨日のこと、大丈夫か」

「あ、うん…、大丈夫」


準太に聞かれて、笑顔で答える。
―…ちゃんと、笑えているだろうか。


「そっか。無理、すんなよ」

「…うん」


そう言った準太に頭を撫でられる。
それがなんだか心地好かった。

いつもは朝練があるけれど、ちょうど試験期間に入ったので今日から一週間部活はない。
だから、慎吾さんと会わなくて済むから気が楽だった。
このままの状態じゃ、慎吾さんに会ってもうまく笑える自信がないから。






110206
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