部活が終わった後、私たちマネジは後片付けをしていた。
それも漸く一段落して、制服に着替える。
着替え終わったころには部員のみんなも着替え終わっていて、既に帰った人が何人かいた。
私も帰ろう、なんて思いまだ残っているみんなに挨拶をする。
と、慎吾さんが近づいてきた。


「名前、一人で帰んの?」

「あ、はい。準太まだ来てないし…」

「あー…。じゃあ俺が送っていってあげよーか?」

「え、でも…、いいんですか?」


慎吾さんは考えるそぶりをしてからそう言った。
私はこんなチャンス滅多にない、なんて思いつつも少し遠慮してしまう。


「いいっていいって。女の子が夜道一人で歩くの危ないっしょ」

「ありがとうございますっ」


慎吾さんの言葉にうれしくなる。
慎吾さんのさりげない優しさが好きなんだなぁ、なんて改めて思った。




住宅街を二人で歩く。
周りは暗くて、なんだか慎吾さんと私の二人きりみたいな感覚になる。
慎吾さんは自転車を転がしながら、私の歩く速度に合わせてくれていた。


「そういえばもうすぐ夏大ですね」

「そうだな」

「がんばってくださいね、」

「ああ、もちろん」


もうすぐ夏が始まるんだなぁ、なんて改めて思う。
この夏が終わったら。
先輩たちは部を去って、それぞれの進路を決める。
それまでに、想いを伝えたい。

このまま好き、って言えたらどんなにいいだろう、なんて思う。
まぁ、慎吾さんが私のことを好きだったらの話だけれど。

慎吾さん、と声をかけようとしたら、慎吾さんは前を見たまま立ち止まった。
私は不思議に思いつつも、慎吾さんの目線を辿って前を見る。


「…?」

「瑠花、さん…?」

「え…?」


目線の先には女の人がいて。
どこかで見たことがある顔だった。
でも、その人は泣いていて。
慎吾さんの方を見ると、驚愕したような顔をしていた。


「島、崎…?」

「っ…、どうしたんすか、」

「なんでもない、から…」


伏し目がちに言う女の人に、慎吾さんは駆け寄っていく。
私は何も言えずにただ立ち止まったままその光景を見ていた。

慎吾さんは女の人、瑠花さんの目尻の涙を人差し指で拭う。
愛おしそうに瑠花さんを見る慎吾さんを見て、私は一言声をかけてその場を離れた。



あんな慎吾さん、見たことない…―――。





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