あの人に会ったのは、入学式の日だった。
桐青は中等部からの持ち上がりと、外部入学の二通りあって、私は外部入学生だった。
なので慣れない学校で迷子になってしまい、自分の教室がどこだかわからなくなってしまったのだ。
どうしよう、なんて思っていると、通りがかった先輩であるあの人が声をかけてくれて。
その先輩のおかげで、自分の教室に無事戻ることができて、すごく感謝をした。
それと同時に、先輩のあの人に恋をした…―――。




あれから1年。
私は野球部のマネジになり、あの人、島崎慎吾さんが野球部だと知って。
毎日幸せな思いを感じながら、マネジの仕事を精一杯がんばっていた。


「休憩!10分後に練習再開すっぞ!」

『はい!』


主将である和さんの掛け声に、みんな返事をしてベンチへ来る。
私はドリンクやタオルを手渡したり、と忙しくなる。


「名前」

「あ、慎吾さん。お疲れ様ですっ」

「サンキュ」


そういって慎吾さんは私の手からドリンクとタオルを受け取る。
いつもお礼を言われると、顔が少し熱くなるような気がする。
だって、慎吾さんが好きだから。
うれしくて、自然と笑顔になる。


「にやけてんなよ、ばーか」

「なっ、にやけてなんかないってば!」

「いや、にやけてたって。」


幼なじみである高瀬準太に言われて、顔を引き締める。
うぅ、なんで準太にばれるんだろう…


「それより俺のドリンクとタオルは?」

「はいはい、」


そう返事をして準太にも手渡す。
サンキュ、と言われて頭をぽんぽんと二回叩かれる。
いつまでも子供扱いされているようで少し不満に思う。
だけど他の部員の人達にも渡さなければならなかったのでそのまま準太から目を逸らした。

だから休憩の間、準太が私の方を見ていたことに気づかないでいた。




100425
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