夜。
急に一人が寂しくなって、携帯から一つの番号を探し、それにかけてみる。
しばらく呼び出し音が鳴ったあと、今日学校でも聞いた声が聞こえてきた。
「…たかや、」
『どーした?』
「ううん、なんでもない」
『は?』
意味がわからない、という声に、隆也らしくて少し笑いそうになる。
少しの沈黙のあと、小さく私は呟いた。
「……好き」
『…なんだよ、いきなり』
「…言いたかっただけだから」
『…なんか、あったか?』
心配そうな声に、涙が出てきそうになる。
だけど、なんとか堪える。
「何もないよ」
『…じゃあ、』
「ただ、…声が、聞きたかったの」
そう、あなたの声を聞いていないと、寂しくて、苦しくて。
それくらい、私はあなたに溺れているの。
『いつも会ってんだろ、今日だって…』
「そう、だけど…。」
『…ったく、しょーがねぇな…』
はぁ、と溜め息が聞こえて、呆れられたのかも、なんて少し落ち込んでいると。
聞こえるか聞こえないくらいの声が聞こえてきた。
『――…部活終わったら毎日、電話してやっから』
そう、ポツリといった言葉に、うれしさがこみ上げてきた。
私だけじゃなくて、隆也もこんな気持ちだったらいいな、なんて。
会えない×会いたい=君不足
(もっと、あなたの声を聞かせて)
10.03.21 再録