今日は二つ年下の彼氏の誕生日で。
メールはしたけれど、やっぱり直接祝いたいという私の勝手な思いから、休日も部活がある彼を学校まで車で迎えにいく。
彼にはなにも言っていないから、びっくりするだろうな、と想像して笑みが零れた。
母校である西浦に到着すると、ちょうど部活が終わったらしく部室から部員の子達がでてきた。
その中に彼もいて、自然と笑顔になった。
「隆也っ!」
「え、名前さん…?」
声をかけると想像した通り、びっくりした顔をしている隆也。
周りにいた部員の子達に挨拶をしてこちらに駆け寄って来る隆也にうれしくなった。
「どうしたんすか、いきなり…」
「ごめんね。やっぱりさ、直接お祝いしたくて。」
「え、」
「誕生日会、家でしない?」
迷惑じゃなければ、と付け足して言うと、隆也はそんなことないです、と言った。
「じゃあ車乗って。ケーキとかも買ってあるんだよー」
隆也の誕生日なのに、こっちがうれしくなりながら車に乗り込む。
助手席に乗り込んだ隆也を確認して、車を発車させようとする。
「名前さん」
「え?」
名前を呼ばれて隆也の方を向くと、腕を掴まれて引き寄せられる。
そのまま隆也にキスをされた。
「っちょ、ここまだ学校の前だよ…?」
「名前さん家まで待てなくて。これ誕生日プレゼントでいいっすから」
ニィ、と笑いながら言う隆也に、やられた、と思った。
恥ずかしさを抱きながら、今度こそ家に向けて車を走らせる。
車の中での会話は普段とかわらなかった。
私の家であるアパートの駐車場に車を止めて、車を降りようとした。
「名前さん」
「え?」
腕を掴まれて、今度は引き留められた。
不思議に思いながら隆也の言葉を待つと、その言葉はすぐに発せられた。
「まだ、直接言ってもらってないんすけど」
「何が…?」
「祝いの言葉」
「え、あ、そっか。でも家入ったらお祝いするし…」
「いまがいいです」
「え、」
珍しく我が儘を言う隆也に、こっちがびっくりする番で。
いつもと違う隆也に、なんだかドキッとした。
「どう、したの…?我が儘なんてそんな言わないのに」
「たまには言いたくなるんすよ」
「…わかったよ。えと、誕生日おめでとう、隆也」
そういった途端、またもキスをされて。
なんだか今日の隆也は甘えたがりだなぁ、と思った。
唇が離れると、なんだか名残惜しさを感じた。
「隆也、」
「俺、名前さんといられるならどんな誕生日でもいいんです。」
「…うん、」
「気持ちだけで、うれしいですから」
「…私もうれしいよ」
隆也の誕生日なのに、私まで幸せな気持ちになってる。
不思議だ。
やっぱり直接会って伝えられてよかった。
来年も、再来年も、ずっと隆也と一緒に過ごせればいいな。
そんなことを思いながら、もう一度唇を重ねた。
甘い幸せ
隆也誕生日おめでとう!
101211