高校3年の冬。
ほとんどの生徒は進路が決まっていて。
私もその中の一人だった。


「名字ー」
「あ、水谷。どうしたの?」
「昨日の数学のノート見して…!」


お願いっ、と顔の前で手を合わせる水谷に、しょうがないなぁ、といいつつ数学のノートを手渡す。
こうやって頼られるのも悪い気がしないし。
…それにしても。


「そういえば水谷ってどこ進学するんだっけ?」
「俺?俺はA大学だよー。」
「あ、千代と一緒なんだね」
「うん、そうだよ。同じところ目指したんだ」
「そっか、」


私のノートを、前の席の人の椅子に座って写す水谷。
そんな水谷に進路をきいてみる。
まぁ、前に友達に聞いたから知ってたけれど。
なんとなく、本人の口から聞きたかったんだ。


「名字は?」
「C短大だよ」
「へぇー、じゃあ結構近いんだねー」
「うん、だから家から通えるんだ」
「そっか、俺なんか一人暮らししなきゃなんないんだよね。」


苦笑しながら答える水谷に、仕方ないじゃん、と返す。
だって、千代と一緒にその大学目指してたんでしょ?と付け足すと、うん、と嬉しそうに返事が返ってきた。


「…水谷と千代、付き合ってどのくらい経つんだっけ?」
「んー、1年はまだ経ってないかなぁ…?」
「あー、そうだよね、付き合い始めたの3月だもんね」


私の失恋も、そのときだけれど。
水谷と千代が付き合い始めたと聞いたのは、友達伝いだった。
2年も片想いをしていたのに、そのとき私の片想いは終わったんだ。


「名字は?阿部とどんな感じ?」
「隆也と?うんー、普通だよ?」
「あはは、普通って。阿部うるさくないー?」
「んー、たまにね。でも心配してくれてるんだ、ってわかってるから…。」
「幸せそうだね」


にこり、と水谷は笑う。
私もうん、と微笑んだ。



その笑顔が好きだった。
いつか、その笑顔が私だけに向いてくれるといいな、なんて思ってた。
だけど、それは叶わなかった。

でも、だからこそいまの幸せがあるんだ。
水谷が幸せだったら私も幸せだから。

だから、二人の関係がずっと続くように祈ってるよ。


私もいま、幸せだから。


「あ、住むところ決まったら遊びにきてよ!阿部と一緒にさ」
「うん、わかった。決まったら教えてね」
「うん」


水谷の笑顔は、初めて見たときと変わらず輝いていた。




君の幸せを願う



水谷に片想いしてたけど失恋してしばらくして阿部と付き合うけどあのときの想いはまだ忘れてない、て感じ。
あ、水谷夢初だ。

10.09.10
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -