「せんぱい、」


掃除中、焼却炉にゴミ捨てに来たら、ふと聞こえてきた声。
女の子の声だった。


「好き、です…」


詰まりながらも、一生懸命伝えようとしているのがわかった。

先輩、か…。

覗くつもりはなかったのだけれど、ここまで来て引き返したらなんだかばれそうで。
それに、告白している女の子はどうやら1年生のようで。
先輩、と呼ばれていたやつはどんなやつかな、なんて少し興味本位で覗いてしまった。


「悪い、俺好きなやついるから…」


そういって申し訳なさそうな表情をしていたのは、なんと同じクラスでしかも隣の席の阿部隆也だった。
私はびっくりして思わず持っていたゴミを落としそうになった。


「そう、ですか…。でも、がんばれば私を好きになってくれるかもです、よね」


ゴミをそっと地面に置いて耳を傾けていると、女の子の言葉にまたも驚く。

がんばれば好きになってくれるって…。
すごいな、いまどきの高校生は…、って私も高校生だけど。

そんなことを内心呟きつつ、阿部の反応を伺う。


「…好きになんねーよ。俺はあいつ一筋だから。」


阿部の言葉に涙を流して、女の子はこちらに走ってきた。
私は焦りながらゴミを持って少しその場から離れる。
横を先ほどの女の子が走り去っていった。


「おい」
「うわぁっ!!あ、阿部…!」
「何やってんだよ」


機嫌悪そうに聞いてくる阿部に、思わず目をそらす。
動揺してたらさっきのこと聞いてましたって言っているようなもんだ。
落ち着け、なんて心の中で呟いて口を開いた。


「えっと、ゴミ捨てに来ただけだけど…。あ、阿部は?」
「知ってんだろ?」
「えっ」
「さっきの。見てたんだろ」
「えっと…」


阿部の確信めいた言葉に詰まってしまった。
なんだか正直に言わないと怒られそうなので言うことにした。


「ごめん…。でもね、まさか阿部が告白されてるなんて思わなくて…」
「ふーん…」
「ほ、ほんとだから!…っていうか、阿部好きな子いたんだね。」
「あ?ああ…」


意外、なんて思っていると、阿部は私から目を逸らした。
なんだろう、照れてるのかな?


「誰にも言うなよ。」
「あ、う、うん…」


ギッと睨みつけながら言われたので少し怯えながらも頷く。
そんな睨まなくてもいいじゃん…


「…っていうか、別に誰にも言わないよ。」
「そうか?」
「うん。だってからかったら絶対怒るでしょ?怒られるの嫌だもん」
「…」


変なやつ、そう言われて少しむっときたけれど、阿部が続けて何か言いそうだったので黙った。


「まぁ、そんなやつに惚れた俺も俺だけどな」
「え…」


微笑みながらそう言った阿部の言葉が、しばらく理解できなかった。




君の言葉で世界が変わる

(私も、好きみたいだ。)



文才とタイトルセンスほしい。

10.05.08
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