私は学校帰り、いつものようにファミレスでバイトをしていた。
いつものように接客をして、いつもと同じ時間に終わり、家に帰れるはずだった。

そう、それは、突然で、だけど必然でもあった。


「は…るな…?」


ファミレスの扉を開けて入ってきたのは、中3のとき別れてしまった、元彼の榛名元希だった…。
しかも、隣には彼女らしいかわいい女の子を連れて。





からんからん、という音がして、お客さんが店内へと入ってきた。
私はいつものように接客をしてこれで家に帰れる、はずだったのだ。
そう、入ってきた客が、彼ではなかったら。


「いらっしゃいませ、何名様でしょ…」

「は…るな…?」
「おー、名前じゃねーか。やっぱ秋丸の言ったとおりここでバイトしてたんだな」
「あ…、う、ん…。」


彼は、あの頃と変わらない笑顔で言った。
私達が2年前に別れたなんてことが、嘘だったかのように。
それより、彼が通っている武蔵野とここでは結構距離がある。
なのになぜここへわざわざ訪れたのだろうか。


「あ、2人な。」
「え、あ、はい。ではお席へご案内します。」


ぼーっと考えていたら、榛名が指を2本立てて言う。
私は動揺しながらも仕事をしなくては、と気を取り直して席へ案内した。
知り合いに言うのもなんだか気恥ずかしいな、なんて思いながらも、心の中ではやはり動揺してしまっている。


「ご注文がお決まりでしたらお呼びください。」


そう言って二人が座った席から離れようとする。
が、榛名の名前、という私を呼ぶ声で立ち止まって振り返る。


「な、何?」
「何時に終わる?」
「え、っと…、これで、あがるけど…。」


びっくりしながらも、なんとか普通に答える。
すると榛名はふうん、となんとも言えない返事を返してきた。


「じゃあ終わったら俺達が食い終わるまで待ってろよ」
「え?」
「話があるから」
「…う、ん…。」


少し考えてから頷くと、榛名は満足そうに笑顔になった。

意味がわからない。
なんで、今更。
なんの話があるのだろう。
第一、もう既に新しい彼女がいるというのに私に対して何を話すことがあるのだろう。

そんなことを考えながら仕事をあがった。



***



榛名から近くの公園で待ってろ、とメールがきたのでそこのベンチで待つことにした。

というか、なんでメアド変わってたのに知ってるんだろう。
もしかして秋丸くんに教えてもらったのかも、なんて自己解決をする。
それよりも、榛名のメアドが変わっていないことに少し驚いた。

変えるのがめんどくさかったのか、それとも…。

そこまで考えて、頭を振る。
そんなわけない、と自分に納得させて考えるのをやめる。
なんでこんなに榛名のことで悩まなければいけないのだろう。
そもそも、彼があの店にこなければこんなことにはなんなかったのに。


「名前」
「わっ」


いきなり声をかけられびっくりして持っていた携帯を落としそうになった。


「何ぼーっとしてんだよ」
「べ、別にぼーっとしてなんか…。って、彼女さんは?」
「は?あー、送ってきた。」
「へぇ…」


榛名の言葉に私はそっけなく言う。
やっぱり榛名は変わってない。
あのころ、私達が付き合っていたときもそうやって私を家まで送ってくれた。
思い出すと、涙がでてきそうになる。


「…っ、…で、話は?」
「あー、なんつーか、その…。」


早く彼と話を終わらせようと本題を振る。
榛名は榛名らしくなく言葉をにごらせている。


「急用じゃなかったらあとで聞くけど。」
「だーっ、ちょっと待て!あー…、っと、なんで俺にはメアド変えたの教えねーんだよ」
「…そ、れは…、別になんだっていいでしょ」


本当は、未練があるみたいで嫌だったから、なんて、榛名には言えない。
誤魔化した言葉に不満のような榛名だったけれど、まぁいいや、と流した。


「それより、…あー、なんつーか…」
「…はっきり言ってよ。」
「わーってるよ!…俺達、さ…、もう一度付き合わねぇ?」

「え…?」


榛名の言葉に耳を疑う。
もう一度?付き合う?
どういうこと?


「…だから、俺は、まだお前が好きなんだよ」
「…っ、そ、んなの…。だ、第一、彼女はどうするの?」
「は?彼女?んなのいねーけど」
「じゃ、じゃあさっきの子は…?」


きょとん、とした表情で言ってのける榛名に、一緒に店に来ていた子のことを聞いてみる。
あれはどうみても、榛名の彼女じゃないのだろうか。


「あー、あいつは、後輩。」
「後輩…?」
「ファミレスで飯でも、って言われたから付き合っただけ」


だけ、って…。
どうみても、あの子は榛名のこと好きそうだったのにな、なんてあの子に少し同情した。


「で、でも…、もう一度って…。」
「あんときはさ、受験で忙しかったし、いろいろとすれ違ったりしてたから…、」
「……」
「だーっ、もーっ、俺はまだおまえが、名前が好きなんだよ!!だから付き合え!わかったか!!!」


一気に言われて頭が追いつかない。
まだ、私を好き?
だから付き合え?
なんで、…なんで、今更…


「…っ馬鹿…」
「…」
「…私も、まだ榛名が、元希が好きだよ…っ」


そう言って思わず榛名…元希に抱きつく。
すると元希は何も言わずに抱きしめてくれた。


「よかったー…、これで断られてたら、また腐るところだったぜ…」
「あはは、なにそれ」


少し笑いながら言う元希に、私も笑う。
ちょっとしたことが、こんなにもうれしかったなんて。
元希を、好きになってよかった、そう思えた。




サネカズラの喜び

(そういえばなんであの店にきたの?)
(あいつを送っていくついで。)
(ふーん…)
(ほんとはおまえに会いに行くためだっつったら?)
(は!!?)
((かわいーやつ))



サネカズラの花言葉...「再会」

実は初の榛名夢。

10.03.30
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