夕方の春風にあたっていたら、なんだか少し寂しくなって。
電話帳から名前を探して、彼に電話をする。
そして近所の公園に呼び出した。

「なにやってんの」

「んーちょっと春を感じてた。」


私服姿じゃなくて、制服なままの彼を見てああ、部活帰りだったかな、なんて申し訳なくなる。
ごめんね、急に呼び出して。そういうとやっぱり彼は気にすんな、なんて優しい言葉をくれる。
ああ、やっぱり彼を呼んで正解だった。


「どうした?」

「何が?」

「おまえのことだからまたなんかあったんだろ?」

「…うん」


慎吾の言葉に頷く。
彼の前では素直に言えてしまうんだから、不思議だ。


「話してみ」

「…バイトでちょっと、失敗してね、怒られたの、店長に」

「そっか」

「最近怒られてばっかりで。ちょっとつらいなぁ、って。」


乗っているブランコを少し漕ぎながら、慎吾に今日あったことを話す。
つらくなって、慎吾に会いたくなった。
隣のブランコに座っている慎吾は、何も言わずにただ聞いてくれた。


「…それと、なんか寂しくて、慎吾に会いたくなった」

「俺に?」

「うん」


大変なのにごめんね、と俯いていた顔を上げて慎吾を見ながら言う。


「別に謝んなくていいって。俺もおまえに会いたかったしな。」

「…うん」

「元気だせよ」

「ありがとう、慎吾。」


微笑んで言うと慎吾は頭を撫でながらどーいたしまして、と笑顔で言った。
その笑顔に、何度も救われた。
慎吾がいたから私はいままで頑張れたんだ。
だからこれからも、慎吾がいてくれたら頑張れる。
あまり頼るのも悪いから、どうしてもってときだけだけれど。


「部活で疲れてるのに大丈夫?」

「そんな柔じゃねーよ」

「…すき、だよ」

「俺も好き」


ブランコに乗りながらってのが色気ないけどなーと慎吾の言葉に笑ってしまう。
でも、これが私達だから。
ゆっくりと唇同士が触れ合う。
慎吾を好きになってよかったなぁ。
私たちの間を春らしい生暖かい風が吹き抜けた。

明日も、来年も、ずっと彼と一緒にいられたらいいな。




やわらかな温もりで包んで



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