高瀬とは同じクラスで、たまたま席が隣同士で。
だから、周りの女子より比較的仲がいい方だと思う。
だけど、これくらいは教えてくれてもよかったんじゃないだろうか。
朝から同じクラス、隣のクラスまでもの女子が、高瀬の誕生日を祝いにプレゼントを渡しにきていた。
そのたび席を立つ高瀬の背を、何度みただろうか。
高瀬の誕生日なんて、私聞いてない。
隣の席なんだから、教えてくれてもよかったのに。
前から教えてくれていれば、プレゼントを用意できたのに。
そんなことを思いながら、どうしよう、と考える。
いま持っているものといえば、飴が一つくらいだ。
そんなことを考えていたら、高瀬が戻ってきたようで。
手に持っているピンクの包み紙で包まれているプレゼントを見ながら、こっそりため息をついた。
「今日、誕生日なんだってね」
「え?ああ、まぁな」
「言ってくれればプレゼント用意したのに。」
「そんな気ぃ使わなくていいって。」
苦笑しながら答える高瀬に、やっぱりプレゼントを渡したかった、なんて思う。
好きな人の誕生日くらい、ちゃんとお祝いしたい。
でも、いまはどうすることもできなくて。
「んー…、プレゼントはいまはこれで勘弁してね。」
「飴?」
「うん、いまそれしかないの。」
ポケットに入っていた飴を高瀬に渡すと、ありがとな、と言って高瀬は自分のポケットにしまった。
それを確認してから高瀬に視点を合わせ、言葉を続ける。
「それと、誕生日おめでとう」
「…サンキュ」
ニカッと照れ臭そうに笑う高瀬に、うん、と小さく頷いた。
まだ、言いたいことはあるけれど。
いまはまだ、これでいい。
いつか、彼にこの言葉を言える勇気がでたときは。
ちゃんと、この気持ちを伝えよう。
だから、いまはただ、あなたの誕生日を祝わせて。
いつか、特別な存在になれるように。
伝えたい
準太ハッピーバースデー!
110202