燐が迷子にならないように手を引いて出口へ向かいます。

「あら、鬼灯様!」
「こんにちは、牛頭さん馬頭さん。」

すると、ちょうどお昼の休憩を取ろうとしていた牛頭さんと馬頭さんに会いました。

「現世出張からのお帰り?」
「ええ。お二方もお仕事お疲れ様です。」

たわいもない世間話をしていると、燐が繋いだ手を引っ張って、だあれ?と首を傾げています。

彼女達は地獄の門番の牛頭さんと馬頭さんだと教えれば、初めて会ったとおっかなびっくり、私の後ろに隠れてしまいました。
まあ、彼女達は大きいですしね。普通は驚くでしょう。

「可愛いお嬢さん。」
「よろしくね。」

でも、二人が笑顔でそれぞれ手を差し出してくれば、悪い人でないと分かったのか、その手を両の手で握って、嬉しそうにしています。

「りんです。よろしくおねがいします。」

お二人にそう名乗る頃にはすっかり仲良くなっていました。





「どこいくの?」
「閻魔殿…私の上司がいる場所です。」

牛頭さんと馬頭さんと別れ、門の出口をくぐれば、そこはもう地獄。
あちらこちらに現世ではお目にかかれないものが沢山溢れています。

燐もふうん、と頷いた後はあまり喋りませんでした。でもきょろきょろと辺りを見回して、時々驚いたり気になったものがあれば、その度に声を上げて私に尋ねてきました。

彼女が驚くものについて教えれば、純粋な好奇心からか、様々に聞いてきます。最近の獄卒がなかなか気付かないような子細まで聞かれ、教える側の私もはっと驚かされる程。
燐が成長した暁には、獄卒として働いてもらいましょうか。

「ほおずき…ほおずきさま…。」
「どうしましたか。」

今度もまた何か疑問に思ったのでしょうか。
そう問えば、少し首を傾げて、話し始めました。

「あなたはみんなから“さま”ってつけられるくらいえらい人なんでしょ?」

だから、どう呼ぼうか迷った。

うーんと頭を抱えている様は、正に究極の選択を迫られた者のよう。
その様子が少し面白い、と思ったのは私だけの秘密です。

「燐が好きに呼んでください。」
「じゃあ…ほおずき。」

それならあなたもりんのことを“りん”ってよぶし、りんはあなたを“ほおずき”ってよぶから、おそろい。

そう言って笑う彼女はとても可愛らしかったです。


 

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