それは全くの偶然でした。

地獄と天国と、そして現世を繋ぐ境目の門。

「おや…これは…。」

その境目の場所で彼女を見つけたのは。





その日私は現世での視察を終えて地獄へ帰ろうとしていました。
二度目の世界大戦を経て、敗戦国からの脱却の為にも急速に復興の道へ進む日本。そんな現世の変化の様子を知るための視察でした。

「今回の視察はなかなかに面白かった。」

現世土産を片手にゆらりゆらり。
現世で見てきたものを思い返しながら、のんびりと門の方へ歩いていました。
すると、門の近くに何か小さな塊があるのが見えます。

門をくぐった先の通路ならまだしも、こんな扉の前に何かあるなんて。

不思議に思い、近付いて見てみると、それは幼子でした。

「何故…ここへ…?」

こんな幼子が火車さんに引かれて来る程の罪を犯したとは考えにくいし、はぐれた亡者だとしても朧車にきちんと行き先を告げれたとも考えにくい。

はてさて、一体どうしたものか。

首を傾げて考えていると、もぞり。
そんな効果音が付けれそうなくらいにゆっくりと、幼子が体を起こしました。

ぱちぱちと大きな目をしばたかせている様は、自分が今どこにいるのかさえ分かっていないように見えました。
ただ、その子の額に一本、角が生えているのが見えました。

ああ、きっと獄卒の誰かの子供だろう。

そう思い、私はその子に声を掛けたのです。

「こんなところに一人っきりでどうしたのですか?ご両親は?」
「……。」

その子は答えません。
耳が聞こえないのかと思い、しゃがんで子供に目線を合わせました。
すると、一言。

「…ごりょうしん、ってなあに?」

そう尋ねてきたのです。

「親のいない…孤児ですか…。」
「…お…や…?みな…し…ご…?ひとりはひとりだよ。」

そう答える子供に私はひどく驚きました。なぜなら、その子の目は私を肩口を越えて、更に遠くの虚空を見据えていたからです。

それはまるで、贄として村人から捧げられた時の私のような、世の中を達観したような目でした。


加筆修正 2014/03/22



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