「燐、私の真似をするんですよ。」
「うん。」

ごちそうさまでした。
すっかり綺麗になったお皿を前にして2人で手を合わせて。

燐ちゃん、これも食べる?と食堂の方持って来てくださったプリンまで平らげてお腹が満たされた彼女の目は、今にも閉じてしまいそう。
ゆらゆらと揺れる燐の体をそっと抱き上げて。

「大王、業務に戻るのが少し遅れます。」

そう断れば、午前で大きな裁判は終わってるし、もう今日は帰りなよ、といつもよりずっと早く帰された。

早く燐を布団で休ませようと、久々に帰った自室。ひとまず先に燐をベッドに寝かせて、ぐるりと部屋を見回した。

「これだと燐の物が置けそうにありませんねぇ…。」

布団はともかく、歯ブラシだったり櫛だったり着替えだったりといった生活用品は絶対に必要だ。
それらの物が置けそうなほど、今のこの部屋には余裕がない。

「次の休みは部屋の片付けですね。」

燐だって女の子。ベッドは置けなくても箪笥くらいは彼女のためのものを置いてやりたい。次の休みがいつ頃になるか、頭の中でシュミレートして。
この年の女の子が何を必要とするのかが私ではイマイチ判りかねる、と思いついたのはお香さん。
彼女に相談して燐が気に入ったものをあげたい。

そんなことを考えていれば、袖を軽く引っ張られるような感覚を覚えて。下を見ると、私よりもずっと小さな手がぎゅっと、服の袖を握っているのに気がつきました。

子供の力なんてたかが知れてる。振り払うのは簡単。
でも、そうする気にはなれなくて。
ふと息を一つ吐く。

「まあ久々に休むのも悪くはありませんね。」

起きたらやることを考えながら、燐の隣のスペースに体を倒しました。
彼女がベッドから落ちないように、奥の方に少し詰めて、片手を回すのを忘れずに。


 

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