「じゃあ一旦これで難しい話はおしまい!」

そろそろお昼になるし、ごはん食べようよ。

大王の言葉に懐から時計を出して見てみると、確かに昼時。ちょうど現世で有名なあのお昼の生放送番組が始まる時間です。

「大王、残りの裁判は。」
「お昼を食べたらするよ。それより燐ちゃん、お腹すかない?」
「おなか…?」

そう首を傾げる燐のお腹が可愛らしい音を立てて鳴りました。

「…分かりました。食堂に行きましょう。」

ため息を一つ吐いてそういう私に対して、やった、休憩!と喜ぶ大王。午後は溜め込んだ裁判を裁けるだけ裁かせましょうかこのジジイ。

一方燐は食堂がどういった場所なのか分からないらしく、大王のひげを引っ張っています。

「だいおう、“しょくどう”ってなあに?」
「痛い痛いだからひげは引っ張らないで…。食堂はね、ごはんを食べるところだよ。色々ある料理の中から自分が食べたいものを選べるからね。」

それを聞いた彼女の顔が花が綻んだような笑顔になって。

「ほんとう!?」

と、目をきらきらとさせています。
本当ですよ、と頷けば、大王の膝の上からするりと地面に飛び降りて私の側に来たと思えば、袖を引っ張って、はやくはやく、と急かしてきました。

「そんなに焦らなくても大丈夫ですよ。それに燐は食堂の場所が分からないでしょう。」

だから落ち着きなさい、と言えば分かった、と引っ張る手を緩めます。代わりにその手を閻魔殿へ来た時と同じように繋ぎました。

「だいおう、はーやーくー。」
「ちょっと待ってね…。」

書類で散らかる机を簡単に整え終えた大王が側に来ると、燐は私と繋いでいない、空いている方の手で大王の手を取って。

「だいおうもはぐれないようにー。」

と、嬉しそうに繋ぎました。


 

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