廊下を挟んで中庭に面した襖の隙間から光が零れ、遠くから一番鶏の鳴く声が聞こえる。
ああ、今日もいい天気だなって思うより先に、けたたましく音を立てて部屋の襖が開かれた。

「Good morning,姉上! 」

キラキラと効果音が付きそうなくらいの眩しい笑顔で挨拶をしてきたのは、実弟の政宗。

「おはよう、政宗。」

襖は静かに開けようね、と言えばOK、次から気を付ける、としゅんとした顔をした。
それが可愛くて頭を撫でてあげれば、名前姉上と私を呼びながらすり寄ってくる。まるで犬のよう。

「朝の鍛錬はもう終わり?」
「ああ。姉上のところに行く前に終わらせた。」

じゃあ、朝餉を食べないとね。

そう言えばもうしばらくこうしていたい、と駄々をこねる彼は、奥州筆頭の名を背負った一国一城の領主様。

「全く…政宗は甘えん坊さん?」

でも、私にとっては可愛くて大切な弟。
笑いながら甘えたさんだと言うと、No!と素早く返された。

「姉上に対してだけだ。」

それでも甘えたなところは否定しないんだね、なんて言いながらまた頭を撫でる。
政宗も私に抱き付いてきて、そのまま二人で布団の上に倒れ込んだ。

二人でくっ付いたままおしゃべりして。さっきまで寝ていた布団は未だぬくぬくと暖かい。
天気も良くて、部屋中が暖かな空気に包まれている。
これで眠くならない方が不思議じゃない?

ああ、遠くの方で小十郎が政宗を呼ぶ声がする。もうすぐ私付きの女中もここに来るだろう。
でも、ぽかぽかとした陽気と柔らかい布団のおかげで頭がぼんやりとしてきた。
隣の政宗なんて、欠伸を噛み殺しているし。

すると、政宗が口を開いて。

「小十郎が来るまで。」

それまではおやすみ。

それはなんて素敵な提案。
たまにはのんびりした朝もいいじゃない。
次第に重くなる瞼に抵抗することを放棄して、二人で同時に目を閉じた。



眠りについたお姫様

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