花弁のようにひらひらと剥がれ落ちる白い世界。 その剥がれ落ちた場所からは少しずつ色が見え始めた。 「これ…は……?」 色は合わさり、1つの画となっていく。それは私を酷く懐かしい気持ちにさせた。 「どこかで見たことがある…?」 画へ手を延ばし、触れれば頭の中にある光景が浮かび出す。 「三成…。半兵衛先輩…?」 思い出した名を口にすれば、その画は次第にハッキリとしたものになって。1つ1つ画が切り替わる度に、それに写り込んでいる人々の名を唱えていく。 「秀吉先輩……。吉継さん…!」 真っ白だった世界が完全に色を取り戻した時、私の中には昔の出来事が思い出されてぐるぐると渦巻いていた。 そして、私の近くに転がっていた白い本が急に光ったかと思えば、1人の人物が描かれた。 ───里香! どこからか、私の名前を呼ぶ声が聞こえる。 その声が開かれた本から聞こえる気がして、脇にあった本を取り上げ描かれている人物へと手を触れた。 不意に思い浮かんだ名を呟く。 「家…康……。」 刹那、本が再び光り、その光が私を包み込む。もう恐怖は感じない。代わりに嬉しさが体中を駆け巡り、その暖かさに身を委ねて静かに目を閉じた。 9/10 ←|→ [Back] |