花弁のようにひらひらと剥がれ落ちる白い世界。
その剥がれ落ちた場所からは少しずつ色が見え始めた。

「これ…は……?」

色は合わさり、1つの画となっていく。それは私を酷く懐かしい気持ちにさせた。

「どこかで見たことがある…?」

画へ手を延ばし、触れれば頭の中にある光景が浮かび出す。

「三成…。半兵衛先輩…?」

思い出した名を口にすれば、その画は次第にハッキリとしたものになって。1つ1つ画が切り替わる度に、それに写り込んでいる人々の名を唱えていく。

「秀吉先輩……。吉継さん…!」

真っ白だった世界が完全に色を取り戻した時、私の中には昔の出来事が思い出されてぐるぐると渦巻いていた。

そして、私の近くに転がっていた白い本が急に光ったかと思えば、1人の人物が描かれた。


───里香!


どこからか、私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
その声が開かれた本から聞こえる気がして、脇にあった本を取り上げ描かれている人物へと手を触れた。
不意に思い浮かんだ名を呟く。

「家…康……。」

刹那、本が再び光り、その光が私を包み込む。もう恐怖は感じない。代わりに嬉しさが体中を駆け巡り、その暖かさに身を委ねて静かに目を閉じた。



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